研究課題/領域番号 |
23521009
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
森谷 裕美子 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (40221709)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | フィリピン / 日系人 / 移民 |
研究概要 |
本研究の目的は、もっぱらアメリカ研究、ハワイ研究として行われていた日系移民研究を、そうした地域と異なる特徴を持つフィリピンでの日本人の移住社会への適応過程にかんする実証的な研究を行うことで、多様な移民問題の実情を把握し、グローバル化された世界の今後の見通しを立てるための提言を行うことにある。 そこで本年度は、その準備段階として、移民に関するさまざまな資料の収集およびその整理を行い、あわせて予備調査をマニラおよび北部ルソンを中心に行った。とりわけ北部ルソンではFilipino-Japanese Foundation of Northern Luzon, Inc.において多くの貴重な資料を得ることができ、それに基づき具体的な調査の対象となる集落および家族を選定し、予備調査を実施した。北部ルソンにおいては、先住民族が主として住む地域にも多くの日本人が定着しており、現在でもそうした日本人の残したものが多く存在している。また、先住民族の人々のあいだでも、日本人に関するさまざまな記憶が深く残っている。 本研究は、先住民族の人々が彼らをどのように受け入れそれが相互の文化にどのような影響を与えたかについて、それを受け入れ側の視点から分析することにその特徴があるが、初年度の調査において、現在、北部ルソンでは日系人の人々が日本での就労のためのルーツ確認を盛んに行っており、実際に日本へ行ったことのある人も多く、そうした「新たな日系人」にたいする周囲の人々の受け止め方についても視野に入れて考察しなければならないことが明らかになった。また、北部ルソンへの移民の先駆者たちをよく知る2世の方々の多くがすでに亡くなられており、彼らの経験や思いが失われつつある今日の状況において、本研究の遂行が急務であることを初年度の研究活動を通して再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、短期間ではあったが3回の現地調査を行うことができ、多くの資料と人脈を得ることができた。そういった意味において本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。次年度は、これをもとに本調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、インタビューおよび調査の補助をお願いする予定であった方々の都合により、その一部を来年度に実施することとしたため謝金、その他で繰越金が生じた。それ以外については、当初の予定通り、初年度の研究成果を踏まえ、調査対象地域において本調査を行うとともに、引き続き資料の収集を行う。なお、日本人移民のなかには戦後、帰国した者も多く、彼らに対するインタビュー調査も今後、日本で行う予定である。最終年度については、本調査およびそれに伴う補足調査を行い、論文として成果をまとめ公表するとともに、これまで築きあげてきた関係性をさらに強化するためのネットワーク作りを行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は現地での調査が中心となるので、研究費の多くはフィリピンおよび国内での調査のための旅費および謝金に使用する予定である。
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