本研究は、日系人のフィリピン・ルソン島北部での移住社会への適応過程に関する実証的研究であり、ここでは戦前、多くの日系人が先住民族社会に定着していたが、そこで彼らがどの様に受け入れられ、それが相互の文化にどの様な影響を与えたかについて分析を行った。その結果、その社会的背景によって日系人の生活実態や先住民族との関係性が大きく異なり、日系人社会が極めて多様であることが明らかになった。またその際、先住民族を母とする複数の属性を持った2世が多く生み出されたが、彼らは歴史に翻弄されながらも幾つかの属性の中から自身の社会的、文化的文脈に応じてそのアイデンティティを選択し、変容させてきたということが分った。
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