研究課題/領域番号 |
23521012
|
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
笹原 亮二 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 教授 (90290923)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 民俗芸能 / 島 / 海 / 瀬戸内海 / 民俗学 |
研究概要 |
本研究は、島々・海・沿岸地域を一体の島嶼世界と捉え、そこでの民俗芸能を歴史的に形成・伝承されてきた島嶼世界の民俗文化として解明することを目的として、瀬戸内海や九州北部・西部等の、西日本各地の多島海的海域における島々と沿岸地域の民俗芸能について調査を行い、相互の比較を試みるものである。初年度の平成23年度は、瀬戸内海の島々と本州・四国の沿岸地域、及び九州北部・西部の多島海的海域とその沿岸地域の民俗芸能について、論文・調査報告書等の文献や関連資料の調査・収集や情報収集を、各地の図書館等において実施し、本研究の対象となる地域全体の概括的な状況を把握した。調査を行ったのは、岡山県立図書館・倉敷市立中央図書館・広島県立図書館・広島市立中央図書館・福山市立中央図書館・山口市立中央図書館・香川県立図書館・高松市立図書館・愛媛県立図書館・松山市立中央図書館・佐賀県立図書館・長崎歴史文化博物館・長崎市立図書館・熊本県立図書館等である。加えて、こうした調査の課程で得た情報に基づき、各地の民俗芸能に関する現地調査を行った。調査を行ったのは、戸島八幡宮祭礼のだんじりと木遣り歌(岡山県倉敷市)・能登原のとんど(広島県福山市)・一宮神社祭礼の御神幸と祭囃子(広島県尾道市)・十二神祇神楽(広島県廿日市市)・萩原神楽(広島県三原市)・祭礼の造り物(広島県三原市)・早長八幡宮祭礼の御神幸と木遣り歌(山口県光市)・住吉神社祭礼のだんじりと獅子舞(香川県高松市)・立川神楽(愛媛県内子町)・鹿踊(愛媛県西予市)等である。こうした現地調査を並行して行うことで、文献等の関連資料の調査をより適切かつ効果的に進めることができた。これらの地域の民俗芸能は、同系統の島々を挟んだ対岸での一致や遠方の一致等、現在の行政区分に収まらない様々な形態の分布が認められ、島々や海路を介した伝播を精密に追うことの重要性を改めて確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで十分な資料や情報を有していなかった瀬戸内海沿岸の各県域を初め、本研究の対象となる地域全体について、関連資料の調査や情報収集を一通り行い、概括的な状況をほぼ把握することができた。また、各地図書館等での文献等の調査・収集や情報収集に加えて、各地の民俗芸能に対する現地調査を並行して行ったことで、文献等の関連資料の調査や情報収集をより適切かつ効果的に進めることができた。同時に、今後の調査研究の課題や問題点のより正確な把握を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
瀬戸内海の島々と沿岸地域、及び九州北部・西部の島々と沿岸地域等、西日本各地の多島海世界に伝わる民俗芸能について、初年度に行った先行研究等の調査と情報収集を通じて把握した全体的な状況に基づき、各地の民俗芸能に対して現地調査を中心とした調査研究を行う。また、それぞれの地域において、文献等の関連資料の調査・収集や情報収集を併せて行う。 瀬戸内海の島々と沿岸地域は、西日本における最大の多島海的海域として本研究の最も重要な対象地域となるので、特に集中的に調査を行う。 本研究が対象とする地域以外の島々の民俗芸能や、調査地域内外の民俗的な祭や儀礼についても、比較や参照すべき事例として必要性が認められた場合は調査を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、前年度の調査によって把握した本研究の対象地域の民俗芸能の全体的な状況を踏まえて、瀬戸内海を初め、西日本各地の多島海的海域の島々と沿岸地域の民俗芸能について、現地調査を中心に調査研究を進める。 現地調査は、瀬戸内海西部の島々と沿岸地域、及び平戸諸島・玄海諸島の島々と沿岸地域の民俗芸能について、重点的に行う。現地調査は可能な限りそれぞれの民俗芸能の上演にあわせて行うが、上演日時の重複等で当初の予定通り行うことが困難な場合は、翌年度以降に実施が予定される重点地域について前倒しで調査を行う等、状況に合わせて柔軟に対処する。 また、この年度に現地調査を行った民俗芸能に関連するものを中心に、文献等の各種資料や情報の調査・収集を併せて行う。 更に、映像記録・観察やインタビューの記録・文献等、調査研究で収集した各種資料の整理・分析を行う。夏期や秋期等、上演が集中して短期間に大量の資料や情報が得られた場合は、適宜補助の人員や消耗品を充当して効率的に整理・分析を行う。
|