最終年度は、まず5月の日本法社会学会年次学術大会において、前年度までに得た知見をもとに「『自分のため』の司法参加~英・加のPublic Legal Educationの実態を手掛かりとして」と題して個別報告を行った。報告の内容として、日本ではまだ知られていないPublic Legal Education(以下、PLE)について、1960年代後半から国内各地においてPLEを実践しているカナダの中でも特にアルバータ州の実例をもとに紹介し、2006年頃から国家レベルの取組みを行っている英国の状況も参照しながら、日本における国民の能動的な司法参加への手がかりを提示した。その結果、出席者から複数の質問を寄せられたものの、PLEについてのコンセプトや具体的なイメージの共有にいたらず、情報知識の提供方法について再検討する必要があると思われた。 その反省をもふまえ、PLE研究の第一人者であるカナダ・アルバータ大学のL. Gander教授の受け入れのもと、2013年9月末から2014年2月上旬にわたりアルバータ州の州都エドモントンを拠点にPLEの理論と実践に関する研究調査を行った。カナダでは、PLE活動機関のパイオニア的存在であるアルバータPLEセンターのスタッフへの面談調査や意見交換、Gander教授とスタッフ弁護士による研究プロジェクトへのオブザーバー参加等を行い、また、10月初旬にバンクーバーで開催された全カナダPLE連合会年次総会に参加し、プログラムの総括コメントを行った(同連合会理事会にもオブザーバー参加)。11月には、英国のPLE活動の面談調査のため渡英した。さらに2014年1月には、Gander教授、アルバータPLEセンター所長やオンタリオ州コミュニティリーガルクリニック所長らと3日間に及ぶPLE研究セミナーで意見交換を行い、今後も研究協力体制を継続することを確認した。
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