ミクスト・リーガル・システム方法論について、過去二年間に行った南アフリカ、ルイジアナ、スコットランド、ケベックの研究者との共同研究の成果をふまえ、日本語、英語、フランス語で本研究の独自の立場を発表した。第一に、分類概念としてではなく、分析の道具として狭義ミクスト・リーガル・システム(大陸法と英米法の混合)を用いる意義を日本法を素材として提示した。第二に、分類概念として広義の混合を採用した上で、特有の混合特徴を日本法と共通に持つグループを想定する必要も認識し、同グループに含まれ得る法を検討して、新たな比較の可能性を探った(セルビアに関し、Sima Avramovic教授研究会開催)。その際、慣習法、伝統法の捉え方が重要であることが認識された(Southern African Society of Legal Historians)。公法にも考察対象を広げ(比較憲法、officium概念)、他の理論との方法上の比較も試みた(「法のクレオール」書評)。条理については21st British Legal History ConferenceおよびSouthern African Society of Legal Historiansにおいて発表を行い、名誉毀損については不法行為の類型論を混合法の観点から見直す英語論稿を提出し、スコットランドおよび国内における研究会で発表した。信託については、これまでのシンポジウム等の業績を公表し、今後の共同研究の方針として、信託問題の理解の鍵としてローマ法を、特にローマン・ダッチ・ローを素材に再検討すべきことを明らかにした。
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