法哲学の伝統的な研究対象であった法に加え、近年その活用が注目されているアーキテクチャの権力を適切に分析するために、社会的統制手段という分析枠組を提示し、それぞれの統制手段の特質と関連性を分析する作業を行なった。その際、グローバライゼーションとともに国家の法を通じた支配力が危機にさらされるという事態が急速に進行しつつある情報技術・情報政策の領域が分析を進めるうえで有効であるとの判断のもとに、国家横断的にサービスを提供し・利用者の行為可能性をアーキテクチャ的に規制する一方で国家法との摩擦を生じさせている情報関連企業などに対して調査を行なうなど、理論と現実を架橋する作業についても検討した。近代的統治の基礎となっている個人とその自己決定というメカニズムが当初から一定の問題を抱えており、さらに近年弱体化しつつあるという認識のもとに、新たに可能な社会像のオルタナティブとして「新しい中世」としての新自由主義、総督府功利主義に加えて監視社会化を徹底するハイパー・パノプティコンがあり得ることを示した著書(単著)を平成26年3月に刊行し、研究成果の取りまとめとした。また、研究の過程で示された分析枠組については、特定秘密保護法案をめぐる議論においても利用するなど、現実的な政策課題との関連性を示す作業が行なわれた。
|