本年度は、フランス国立文書館において、1793年に制定が試みられた一般法典に関して残されている資料などをフランス国立文書館で調査できた。この法典は最終的には制定されなかったが、革命期に国民に共通の法を定めようとした総合的な法典制定の試みを確認できた。最終的にはナポレオン法典を「制定」することによって、歴史的に形成されてきた慣習法は、これに取って代わられ、革命期に目指された「共通の法」を定めるという作業が完成することになるが、革命期にも様々な形でこうした「共通の法」制定の試みもあったことが確認できたといえる。 本年度は最終年度でもあり、前年度までの研究をあわせて、本研究ではアンシャン・レジームの社団国家が、革命のプロセスを経て国民一人一人を基礎とする国民国家へと変貌していったことを具体的に明らかにできた。そして、社団国家の体制が基本的に神によって定められた始原からの歴史的原理によって正当化されるのにたいして、こうした新しい国民国家は、歴史的原理を離れ、「国民の意思」を基盤に正当化されること、さらに自律した意思を持った「市民」が、こうした「国民の意思」の基盤となっていること、また革命期の教育制度に限らず、刑罰制度、公的扶助制度などは、必ずしもすべてが現実化したわけではないが、何らかの形で自律した市民形成に関わっていることを明らかにできた。
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