研究課題/領域番号 |
23530013
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
五十君 麻里子 (安武 麻里子) 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30284384)
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キーワード | ローマ古典法 / プラウトゥス喜劇 / 法観念 / 契約 / 合意 |
研究概要 |
本研究の目的は、紀元前2世紀のローマ大衆に広く人気を博したプラウトゥス喜劇を素材として、ローマ人一般における契約観や合意観を明らかにし、19世紀のパンデクテン法学以来の伝統的なローマ法学の捉え方に代わる視点を学界に提供することにある。 平成25年度においては、「プラウトゥス作品に見るローマ大衆の法意識(仮)」を完成・公表するとともに、反対合意に関する未発表原稿を、プラウトゥス作品の検討から得られた知見から検討する。またドイツで意見交換資料収集を行う、としていた。 これに対して、「ローマ大衆の法知識~プラウトゥス喜劇に見る『笑源』としての法」を既に24年度に公表したので、25年度は、5月に北京(招待)、6月にローマ、ロンドン、9月にザルツブルグ、平成26年2月にハンブルグ、フランクフルト、ミュンヘン(所属機関の費用による)でそれぞれ意見交換や学会発表を行った。計画を超えてイタリアやイギリス、中国をはじめとした東アジアのローマ法、民法研究者と意見交換の機会を持つことができた。さらに、プラウトゥスの『綱引き』を題材に無主物先占を論じた"Alltag der Römer”、ローマ法の想定する人間像を論じた"TAMEN COACTUS VOLUI-Die Privatautonomie und die Römer"をそれぞれドイツ語で執筆し、平成26年度に公表となる予定である。さらに諾成契約と要式契約の関係をプラウトゥス喜劇を用いて論じた"Die Formgebundenheit der Konsensualverträge?"が"Rezeption europäischerRechte in Ostasien"に採用され出版となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定よりも1年早く「ローマ大衆の法知識~プラウトゥス喜劇に見る『笑源』としての法」を公表することが出来たため、想定よりも多くの論文を執筆する機会に恵まれ、また、想定よりも広い範囲のローマ法・民法研究者との意見交換の機会にも恵まれた。とりわけ、当初は契約contractusと無方式の合意pactumとの関係にのみ着目する計画だったが、さらに、プラウトゥス喜劇を通じて、ローマ法における要式と諾成契約の関係や、ローマ法が想定する人間像、ローマ一般大衆の法意識などにも関心が広がり、それぞれ論文としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
プラウトゥス喜劇『バッキス姉妹』において奴隷が無方式の合意(pactum)を締結し、その内容を主人が問答契約(stipulatio)によって確定される場面がある。この両者の関係を明らかにするために、奴隷によるpactum締結を論じたローマ法文をD.2,14から抽出し、両者の関係を検討する。 平成26年度は最終年度にあたるので、9月にドイツで研究成果をまとめ、研究全体の総括をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
先方からの招待や所属機関の費用による出張の機会に、研究遂行に必要な意見交換や研究発表の場を持つことができたため、旅費等を縮小することができたため。 26年度はドイツに滞在し、研究成果をまとめることとしているため、旅費の拡大が予想される。
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