研究課題
ローマ大衆に「うけた」紀元前2世紀のプラウトゥス喜劇を素材として、ローマ人一般における契約観・合意観に関する研究を行い、そこで得られた知見から、古典期ローマである「無方式合意(pactum)」と「問答契約(stipulatio)」の関係を検討した。ローマ法学は、19世紀の法典編纂によって実定法から解放されたものの、そのドグマティックな理解はドイツを中心に未だ根強い。この反省から、最近ではパピルス文書や碑文を用いるローマの法実務を考慮した研究や、古典期の民事訴訟手続きである方式書訴訟手続を重視した研究が盛んとなってはいるが、大衆の法意識に焦点を当てた研究はこれまでになく、この点が本研究の独創的な点であり、国際的にも高い評価を受けた。これは、平成27年10月にオランダ・フローニンゲン市で開催される「ローマ私法の実用」をテーマとした国際シンポジウムに招待されていることや、平成28年2月に「ローマ法と現代法の対話」に関する国際シンポジウムの主催を任されていることにも現れている。平成26年度までの研究成果は、華東政法大学(中国・上海市)において開催された国際シンポジウムでは、奴隷の行為能力に焦点を当てて、"Slaves Concluding Pactum ~ An Analysis of a Case from Plautus'"Bacchides""と題して報告し、さらにイタリア・ナポリ市で開催された国際古代法史学会では、同じタイトルながらとりわけpactumの機能に焦点を当て、奴隷はpactumと表現される相手方との交渉は行い得るものの、法的効力を発生するstipulatioの文言は主人が発しなければならず、問答が成立したことをもって債務が発生し、債務者は不可逆的に債務を負うことを示し、かつことことがローマの一般大衆にも認識されていたことを示した。
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Marco Haase (hrsg.), Tagungsband des Konferenz "Privatautonomie" am CDIR
巻: なし ページ: 7-13
Martin Schermaier (Hrsg.) , Rezeption und Rechtskulturwandel. Europaesche Rechtstraditionen in Ostasien und Russland.
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Shigeo Nishimura, Ulrich Manthe (Hrsg.), Aus der Werkstatt roemischer Juristen. Vortraege der Japanisch-Deutschen Tagung 25. - 27. Maerz 2013 in Fukuoka
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