ローマ大衆に「うけた」紀元前2世紀のプラウトゥス喜劇を素材として、ローマ人大衆の法知識と法感覚に関する研究を行った。まず、『綱引き』の従来その解釈を巡って争いのあるトラカリオとグリプスの口論は、無主物先占についての広範な知識を観客が持っていない限り面白くない事を示し、ローマ大衆の法知識が相当のものであることを示した。次に『バッキス姉妹』を素材に、奴隷が合意約束をもって交渉に当たり、問答契約はもはや後戻りできない拘束力を与えるものと観念されていた事を示した。ローマ法学においては、大衆の法意識に焦点を当てた研究はこれまでになく、この点が本研究の独創的な点といえる。
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