研究概要 |
本研究は、(1)日本のホームレス・住宅困窮者への居住支援施策に関して、法制度比較を含めて理論的・実証的に分析を加えるとともに、(2)「居住の権利」概念を精錬し、「居住支援に係る法システム」モデルを構想することを目的とする。(2)は(1)を前提とするため、本年度は(1)に専心した。 第1に、日本のホームレスについては、東京都山谷地区における日雇労働者・野宿者について、城北労働・福祉センター等を訪問調査し、現状を把握した。同時に、ホームレスに関する文献・資料を収集した。 第2に、米国のホームレスについては、特にホームレスの選挙権をめぐる判例(居住のない人々の選挙権が侵害されたケース)を検討した。その結果、Pitts v. Black事件(608 F. Supp.696, 709-10 (S.D.N.Y.1984))及びCollier v. Menzel判決(176 Cal.App.3d 24, 221 Cal.Rptr.110)を画期として、ホームレスの選挙権に対する保障が充実してゆく状況を確認できた。 第3に、やはり米国についてであるが、カリフォルニア州バークレー市におけるホームレス支援の現状を実態調査した。具体的には、同市において文献資料を収集するとともに、同市のホームレス支援団体(Berkeley Food & Housing Project)が管理・運営する男性用ホームレス・シェルターの内部を視察し、支援の現状を把握した。 以上の成果の一部は、神戸大学における研究会にて報告した(「居住における包摂と排除-ホームレス住民票転居届不受理処分取消事件を素材として-」、北海道大学グローバルCOE『多元分散型統御を目指す新世代法政策学』環境法政策研究会、平成24年2月(於・神戸大学))。報告記録は、来年度には活字化される予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費(直接経費)としては、当初予定の1,200,000円に、「次年度使用額」である255,791円を加えた1,455,791円の支出を予定している。以下、費目ごとに直接経費の使用計画を説明する。 (1)「設備備品費」については、比較的長期の海外出張の便宜のために、ノートブック・パソコンを購入する予定である(208,000円)。これは本研究の基礎となる設備備品である。 (2)「消耗品」については、ホームレス関係図書・資料、住宅政策図書・資料、英米法関係図書、CD等記録媒体の購入を予定している(430,000円)。これらは年々、新たな書籍・資料が刊行されており、本研究が法政策実務を対象とするため、最新のデータや研究にアクセスし、情報をアップデートすることが必要である。 (3)「旅費」のうち「国内旅費」については、東京都台東区(山谷地区)及び大阪市西成区への調査旅費を計上している(90,000円)。上述の通り、次年度には、大阪市西成区をもより具体的に比較・考察の対象としてゆきたい。他方、「外国旅費」については、米国カリフォルニア州バークレー市への調査旅費及びLaw and Society Associationホノルル大会への参加旅費を計上している(計615,791円)。 (4)「謝金」については、専門知識の提供及び資料整理を計上している(52,000円)。具体的には、前者は居住・住宅関係に関する日本及び米国の研究者、支援団体、弁護士等に対する謝金となる。後者の資料整理とは、調査結果の資料整理アルバイトへの謝金である。(5)「その他」については、調査対象者との連絡費や資料印刷費を計上している(60,000円)。
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