研究概要 |
本研究は、(1)日本のホームレス・住宅困窮者の居住支援施策に関して、法制度比較を含めて理論的・実証的に分析を加えるとともに、(2)「居住の権利」概念を精錬し、「居住支援に係る法システム」モデルを構想することを目的とする。本年度も昨年度に引き続いて(1)に専心するとともに、(2)のモデルを構想・検討した。 第1に、日本のホームレスについては、東京都山谷地区を中心として、昭和期の日雇労働者に関する文献資料を収集した。また、日本における野宿者の住民登録をめぐる判決(最2小判平成20年10月3日集民229号1頁)と対比するために、ドイツの住民登録・選挙権行使に係る文献を収集した。第2に、日本の野宿者に対して理解を深めるため、渋谷区の野宿者支援団体の支援活動に参加するとともに、野宿者に対する質問票調査を、社会学の研究者と共同で実施した。第3に、米国のホームレスについては、ホームレスの有権者登録に関する文献を収集するとともに、ホームレス支援に関する米国の法学者の議論を検討した。また、近年顕著になってきている「ホームレス権利章典」(Homeless Bill of Rights)と呼ばれる州法制定の動向を分析した。第4に、わが国の居住支援施策や、ホームレス状態から居宅に至るまでのプロセスについて検討し、中間的施設の質の向上・拡充が喫緊の課題であるという見通しに達した。第5に、将来に向けて、野宿者に限らず、低所得者層に対するヒアリング調査を準備した。 以上の成果の一部は、2013年9月にフランス・トゥールーズ市で開催された「国際法社会学会」(ISA,RCSL)において報告した(題目「A Sociological Observation of the Exclusion of the Homeless and Ways to Include them in Society」)。
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