日本の境界法理は,地籍境界を重視している。境界確定訴訟が筆界を明らかにし,地籍調査も地租改正にさかのぼる原始筆界の復興を目指す。問題は,地籍境界=筆界と所有権界との有機的関連がないこと,特に合意による解決が難しいことである。本研究は,フランス法では土地所有権界を中心とした境界法理があること,その境界確定訴訟は土地所有権界を明らかにするものであること,ナポレオン地籍に始まるフランスの地籍は,税の根拠となる点が中心であることを解明した。日本法においても土地所有権界を中心とした法理への転換の必要である。その際には,土地家屋調査士が,合意と筆界を結びつける役割を果たしうる。
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