研究課題/領域番号 |
23530019
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
北村 隆憲 東海大学, 法学部, 教授 (00234279)
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研究分担者 |
樫田 美雄 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (10282295)
五十嵐 素子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (70413292)
真鍋 陸太郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30302780)
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キーワード | 法社会学 / ビデオエスノグラフィー / 会話分析 / エスノメソドロジー / 航空管制 / 管制教育 |
研究概要 |
本研究は,ビデオエスノグラフィーの手法,つまり,社会学上のエスノメソドロジーおよび会話分析、また、ワークプレース研究などの最新の研究方法論と研究視点を活用して、航空管制場面における複雑なコミュニケーションとそこにかかわる規範的諸活動の実態を、相互行為論的法社会学の観点から、分析するものである。 当該年度は,昨年度とともに、航空管制官教育課程におけるビデオデータ・インタビューデータの収集を施するとともに、各研究者がそれらのデータの分析を行い、研究会を開催して、各自の分析を共有するとともに、学会などで報告を行った。本研究における研究方法論(ビデオエスノグラフィー)をさらに洗練発展させるために,航空管制以外の社会規範の実現がかかわるデータ(法的相互行為など)についての学会発表と論文執筆刊行も行った.詳細は以下の通りである。 (1)データの収集。昨年度からの継続として,研究対象の航空管制場面におけるコミュニケーションは高度に専門的かつ複雑であることから、航空管制官の養成教育課程における、シミュレーション場面の撮影を許可されて、ビデオを6台利用して、管制官、副官、パイロット、管制官教師、の間の言語的・非言語的なコミュニケーションを撮影するとともに、管制官のレーダー画面をハイビジョン撮影して、人々の活動とレーダー画面とを、合成した映像を作成し、参与者の諸活動ととテクノロジー操作との相互作用を分析するためのデータセットを複数作成した。また、このデータを閲覧しつつ管制教員に場面を解説してもらう、セッションを複数回開催した。 (2)分析と研究会。これらのデータセットを各分担者が分析を進めるとともに、研究会を開催した。研究方法論の開発と共有のために,法的相互行為についての研究を進めることを通じて,分析方法論の発展と,他の制度的行為との比較研究の可能性を追求した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究がやや遅れている理由は以下のとおりである。 (1)航空管制現場の担当者や上司の移動によって,さらなる調査許諾のための交渉に時間がかかった.また,管制さらなるデータを収集するための、日程調整が、データ提供先との都合などによって、若干の研究上の遅れが生じた. (2)各担当者の他の業務などによって、各担当者が一堂に会する研究会が予定した回数実施することに困難が生じることが多い。 今後は、データ提供先との調整方法について、改善の努力をするとともに、遠隔ビデオ電話などによる共同研究会などの可能性も検討することによって、研究の若干の遅れを取り戻すことが出来ると考える.
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今後の研究の推進方策 |
現在、若干研究・調査上の遅れがあることから、これを回復するとともに、研究目的に沿った行動な研究を進展させる。 また,並行して,当該研究で必要な,ビデオエスノグラフィーの分析方法論をさらに進展させるために,管制以外の法的・規範的現象がかかわる相互行為,コミュニケーションの現場で収集したデータも分析して,航空管制調査分析との比較分析も視野に入れる. 具体的には、これまで行ってきている,法的相互行為についてのデータ分析と,航空管制の教育場面の理解に基づいて、分析枠組みと重要なトピックの候補を確定して行く。現在までの調査分析で見出されている重要なトピックは、管制官の権利と責任、管制官と副官との言語的・非言語的コミュニケーション、管制官の言語的コミュニケーションとレーダー操作、管制官とパイロットおよび管制官・パイロット・副官との3次元的なコミュニケーションの態様・共同的活動、などである。こうした諸論点について、エスノメソドロジーやワークプレース研究における諸研究の知見を利用しつつ、世界的にもまれな、航空管制官の規範的な諸活動の実態を、詳細な質的分析に基づいて解明する糸口を探りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ収集現場の担当者の異動から、一部調査許諾のための交渉が時間がかかったことで、調査にかかる費用および調査データのトランスクリプト代などの費用を使用せず、一部25年度に繰り越しになる。この部分については、25年度に合わせて執行する予定であり、以下の研究計画の中に含めて研究を遂行する。 25年度は,当該科研費の最終年度に当たるために,基本的には,これまでのデータ分析の理解,および,比較対象としての法的相互行為の分析とに基づいて,さらに進展させた方法論を使って,これまでのデータおよび25年度に新たに獲得するデータを分析して,最終年として,学会報告を積極的に行っていく予定である. ビデオデータやインタビューデータのさらなる詳細な分析を行うために、持ち越している資金の一部は、外部専門家に音声データ部分のトランスクリプト作成を依頼することによって、分析効率を高める予定である。25年度に収集されるデータについても、元航空管制官の協力を仰ぎながら、一般人には聞き取りが困難である部分も多い航空管制官やその他の参与者たちとの実際のコミュニケーション場面を、トランスクリプト化することによって、分析は一段と効率化と性能を高めることが期待される。したがって、トランスクリプト作成費用に研究費を利用する。また、共同の分析セッションを増やすために、遠方からの研究者もいるために、旅費に計上する。また、当面の成果を国際的な関連学会などにおいて報告するための,翻訳,校閲のための費用としても利用する。また、最終年度としては、これまでの研究成果を、ウェッブなどにおいて市民に対しても公開していくことを検討するから、そうした観点からも研究費の利用が予定される。
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