研究概要 |
本年度は第1年目に当たるので、まず視座の確認をおこなった。すなわち、法解釈の技法と思考に関し日本の判決の分析から典型的なパターンを取り出し、今後の研究の指標を準備することと、法解釈の技法を考察する研究がもっとも進んでいるドイツにおける法解釈の技法の歴史、理論、実務の事例を集めることとに重点を置いた。 日本については、先に拙著『法解釈講義』で判決の法解釈方法・手法の分析をおこなったが、本年度はさらに広い範囲で関連判決を――家裁から最高裁までにわたって――集めて分析した。その成果は、A4で約50枚の論説草稿として書き上げることができた。そこでは、単に法文の拡張・縮小解釈等々の典型例だけではなく、裁判官の解釈上の思考の構造や、ratio decidendiが後の時代の判決でどう、解釈作業によって柔軟化されたり実質的に回避されたりしているかなどをも考察した。 ドイツについては、RGZ(ライヒ裁判所判決)の諸判決を、前述の指標にを参考にして検討するとともに、それらについて手がかりになる分析をおこなっているJan Schroeder, Rechtswissenschaft in der Neuzeit : Geschichte, Theorie, Methode ; ausgewaehlte Aufsaetze 1976 - 2009 を通読し、重要となる論文を3点、翻訳した。これらは近く刊行する予定である。また Canaris, Die Feststellung von Luecken im Gesetz, 2. Aufl., 1982は、「法の一般原則」の適用に関する民法の判決を多数示しながら分析を進めている。評価法学の原理的思考を考える観点からも、これを基盤に考察してきた。
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