研究課題/領域番号 |
23530024
|
研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
西村 重雄 福岡工業大学, 社会環境学部, 教授 (30005821)
|
研究分担者 |
篠森 大輔 神奈川大学, 法学部, 准教授 (40363303)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 法定質権 / 法定抵当権 / ローマ法 |
研究概要 |
1)貸主の賃料債権につき借地人ないし借家人の持ち込み動産に対する黙示的質権が、(カトーの農業書にもみられる)契約慣行を基礎として承認されたが、D.20,2,9についての新たな分析解釈により、古典期早期のネルワも質権者による実力による実現を承認していたことが判明した(2011年9月SIHDA、リエージュ大学大会報告)2)イタリア中部のリエーティ市後見人任命文書複本(557年作成)は、その言及人物称号の分析から、西ゴート治下の原本作成であること、後見人の負担する担保設定は、全財産質入約束をする保証人設定であること、この質入慣行は長年の都市法実務に展開したものと考えざるをえないこと、があきらかとなった。(法制史学会、2011年6月、立命館大)。3)4世紀の法学者ヘルモゲニアーヌスはD.27,3,25において、後見人財産への法定質権成立を後見人の担保設定のなされていない場合にかぎるが、上述の保証人の全財産質入を伴う実務慣行が一般化していたためと理解すべきである(テュービンゲン大学法学部、2011年4月、報告)4)ユ帝法学提要4,11,4において、被告側において、訴訟代理人を立てた場合は、本人が判決履行約束の保証人となりしかも全財産を質に入れることが規律されていることにも注目する必要がある(CRIFO追悼京都大研究会、2011年12月)。5)このように、今まで言及がなかった場面でも全財産質入が広く用いられており、(たとえば)夫財産に対する妻の法定質権承認に力があったことは、あきらかであるが、西欧近世のようには、全財産質入ないし抵当がローマ法の時代には取引障害とならなかったように見られ、執行方法との関連が注目される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)ドイツ、フライブルク大学法史研究所に、2011年4月および9月滞在の機会があたえられ、W.カイザー教授と討論し、また、その図書館において文献を参観しえたことがおおきい。2)また、エジプト出土パピルス関係資料の入手が、順調にすすんだことも、おおいにたすけとなった。3)さらに、国内でのローマ法研究会で、何度もその機会を捉えて、議論したことが、研究の進展におおいに貢献した
|
今後の研究の推進方策 |
1)全財産質入が、ビザンツ期に限られず、すでに元首政機にも見られることを、パピルス文書を広汎に利用して、あきらかとする。2)いわゆる執行認諾条項の効力について、長年にわたって議論がかさねられているが、自力執行許容体制との関連で再検討をおこなう。3)内外ローマ法研究者との、立ち入った議論を、本学、フライブルク大学(研究滞在)、オックスフォード大学(SIHDA国際66回大会)、京都大学等で行い、深化させる。4)内外の文献収集とその分析
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費の使用計画については下記の通りである。物品費:関係文献・資料の収集旅 費:9月にフライブルク大学で外国研究者との討論及び関係文献収集のための旅費 国内研究者との本研究課題に関する討論のための旅費謝 金:外国研究者との本研究課題に関する研究協議(福岡工業大学)なお、平成23年は、国外出張での旅費・滞在費を受入国の財団より支給を受けたため、当初の予定の旅費・滞在費が不要となり、未使用額が発生した。未使用額を含め、平成24年度は上記の使用計画に基づき、研究費を使用する。
|