研究課題/領域番号 |
23530025
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
今泉 慎也 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 研究企画課, 主任研究員・課長 (80450485)
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キーワード | イスラーム / 司法制度 / タイ / 東南アジア |
研究概要 |
2013年度はタイの政変の影響を受けたが、タイ・マレーシアでの調査に進展がみられた。タイではイスラーム裁判所で適用される「イスラーム関係法令の立法化が行われておらず、いわばソフトローである「ガイドライン」、それを2011年に改訂した「ハンドブック」が適用される。今回の現地調査においてはハンドブックの起草過程にかかわった法学者等へのインタビューを行うことができた。ハンドブック作成に関与したイスラーム学者の特定もできた。今後、関係者へのインタビューを行うほか、新たなハンドブックの影響についても検証する予定。 マレーシアのサバ州での調査も行うことができたほか、東京外大がコタキナバルで行ったワークショップでタイのイスラーム法適用について報告した。参加者の多くがムスリム(マレーシア人)であることから、タイの状況について知見を提供したことに評価を受けたほか、シャリーアを理解する上で参加者から有効なコメントを得ることができた。また、サバの原住民裁判所との比較を示しながら、紛争処理制度をみる上で当事者の満足を一つの指標とすべきとした点にも関心が集まった。 なお、フィールドの一つであるタイ南部国境県で2004年から始まったテロ行為が10年を経過し、本年1月の新聞報道によれば2013年末までの死者が5926人になり、そのうち3461人がムスリムであった。タイのイスラーム裁判制度の変化の解明がタイ南部情勢の理解を深めるための一助となることを願いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイ政変の結果、困難な状況が生じている。2013年はタックシン元首相の恩赦をめぐって反政府運動が活発化し、「バンコク・シャットダウン」と銘打った反タックシン派による大規模な抗議行動が起きた。政府が打開策として下院解散・総選挙を実施したが、反タックシン運動による選挙妨害や野党側が選挙をボイコットした結果、新政権の組閣ができない状況に陥っている。憲法裁判所は総選挙を無効と判断し、2014年7月に行われる再選挙によっても状況が打開されるか不透明な状況。また、インフォーマントである法学部教授等も反政府運動への関与を理由に一時的に資産凍結の対象となるなど調査にも影響を与えている。
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今後の研究の推進方策 |
タイ以外の地域における調査に力点を移したい。マレーシア、シンガポールの調査結果の分析を進めつつ、フィリピン、インドネシアの情報収集を行う。タイについては政治情勢の改善状況をみながら調査を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
タイ政変の影響で予定していた調査を実施することができなかったこと。 タイ以外の地域に力点を移し、タイについては状況の改善があった場合に調査を追加する。すでに現地調査を行ったマレーシア、シンガポール、ブルネイについての分析を進めるほか、フィリピン、インドネシアについて情報収集を進める。これら地域を主たる対象とする現地調査の実施、資料購入および外部専門家のヒアリング等を行う。
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