洪水によって生じた損害に対する国の損害賠償責任は、大東水害訴訟最高裁判決によって否定された。確かに、予測可能性・結果回避可能性を前提とする伝統的な損害賠償法理で、損害の社会的再配分に対応することはできない。そこで、損害の予防から損害の社会的再配分をトータルに検討する「リスク・マネジメント」が求められる。2002年以降洪水対策法制整備の進んだドイツ水管理法では、EU指令に対応しながら、洪水リスクマネジメントが導入された。ドイツでは、自然災害(カタストロフィー)に対する国家の賠償責任には消極的であり、また、従来の氾濫原の運用や土地利用規制法制度など、様々な問題を提示するものである。
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