研究課題/領域番号 |
23530032
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 孝男 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70404001)
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研究分担者 |
木佐 茂男 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30122039)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 住民監査請求 / 住民訴訟 / 監査制度改革 / 主観訴訟と客観訴訟 |
研究概要 |
本研究は、日本の地方公共団体(以下「自治体」という)における客観的な争訟制度(国、地方係争処理制度、自治紛争処理委員、住民監査請求・住民訴訟制度)の現状と課題を、自治体における行政実務及び実態を踏まえ東アジアとの比較研究を行って明らかにし、今後の客観的争訟制度改革策を考究するものである。 このテーマについて、国レベルでは、平成23年度に大きな法制度の改革案の国会上程や、法運用に関わる重大事件があった。国の側から自治体の義務履行を求める機関訴訟制度を導入するための地方自治法改正案が国会上程されたことや、自治紛争処理委員による千葉県と我孫子市の紛争事件、長崎県と佐賀県との間の紛争への調停事件の完結などである。 こうした中で、研究代表者・田中孝男は、都道府県における住民監査請求の監査結果のデータを踏まえて事件の傾向や法的課題を明らかにして、会計検査院の発行する「会計検査研究」に発表した。政府には自治体の監査委員を廃止する案があるが、その場合の住民監査請求制度について実態を踏まえた制度設計を欠いていることがこの研究成果から明らかとなっている。また、東アジアの制度・実情について、現地調査も含め、資料収集等に努めてきた。 また、研究分担者・木佐茂男は、今日、主観訴訟と客観訴訟の区分が曖昧な争訟事件が現実には多数生起していることを踏まえ、主観的行政訴訟は、いわゆる行政客体のみしか提起できないか、それとも、行政法的法律関係においては、法律的判断により紛争が解決するものであれば、行政と事業者・国民・住民との間ではいずれの主観的行政訴訟が成り立ちうるのかといった法的課題について、その成果を平成24年3月の研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全都道府県における住民監査請求の実態データを踏まえた論文(会計検査研究)を作成し、住民監査請求の実証研究に資する基礎データを整備した。また、この論文により、研究代表者・田中孝男は、住民監査請求の審査をする監査委員に対して最新の内容を講演する機会を得た。研究分担者・木佐茂男のこれまでの検討も、学会報告の水準でまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度において予定していた韓国の住民訴訟研究について、釜山への訪問調査として予定していた金額につき釜山市側の事情で訪問が4月以降に遅れたため、所要額を繰り越さざるを得なくなった。平成24年度は、前年度の繰り越しと合わせ、韓国の住民訴訟及び機関訴訟について研究を進め、日本の地方自治法改正により創設される予定の義務履行請求制度と合わせて比較研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度繰り越し分。旅費40000円、その他2079円。平成24年度分。物品費35万円、旅費70万円、人件費・謝金10万円、その他15万円
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