研究概要 |
本研究は、日本の地方公共団体(以下「自治体」という)における客観的な争訟制度(国地方係争処理制度、自治紛争処理委員、住民監査請求・住民訴訟制度)の現状と課題を、自治体における行政実務及び実態を踏まえ東アジアとの比較研究を行って明らかにし、今後の客観的争訟制度改革策を考究するものである。 3年間の研究期間の最終年度にあたる本年度において、研究代表者・田中孝男は、都道府県や全国各地の市町村の監査委員・監査事務局職員(延べ1,000人以上)を対象に、住民監査請求の実務的論点と対応にあり方について、講演を行った。そして、講演のときの質疑などを踏まえてその成果を、『住民監査請求制度の危機と課題』という書名の1冊の本にまとめた。従前、住民監査請求・住民訴訟では、財務会計行為に先立つ行為の違法・不当性も、一定範囲で審理判断できるとされていたところ、具体的にどの範囲で、どのように判断するのかについて、監査実務に役立つ考え方は、あまり公表されていなかった。本書では、これに対する実践的な判断枠組みを提示し、監査実務の向上に貢献を果たし得たものと思われる。また、こうした客観的争訟制度について、2014年6月7日開催の日本公共政策学会・高崎大会で報告することが確定している。 研究分担者・木佐茂男は、名古屋市で起きた地方議会の議決と市長の再議権行使をめぐる機関訴訟について制度における裁判実務上の多数の問題点(地方議会側の訴訟事務の弁護士費用の予算権限を首長が握っていて対等な訴訟運営ができないことなど)を明らかにし、その成果を判例解説書にまとめたところである。また、住民とその利益を自治体が代表して、公共的な事項に関して契約を締結することの可否・是非や実際に起きた訴訟上の問題点に関する研究成果を中国の雑誌において発表した。
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