研究課題/領域番号 |
23530037
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
大橋 洋一 学習院大学, 法務研究科, 教授 (10192519)
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キーワード | 避難法制 / 災害対策基本法 |
研究概要 |
大規模災害時に市民が避難を行う場合を念頭に置いて、法律はどのような規定を置き、いかなるシステムを構築することによって、市民の生命や財産等を適切に保護することができるのかといった課題に対し、実証研究、比較法研究、法制度分析を重ねることを目的としている。平成24年度は、中央防災会議の避難に関する研究会に参加して得た知見を基に、論文を公表することができた。大橋洋一「避難の法律学」自治研究88巻8号(2012年)26頁から48頁である。政府の各種委員会が公表した報告書等を丁寧に参照して、制度論の在り方を検討したものであり、先行業績のほとんど見られない分野において、開拓的な意味を持つ法律学の文献であると考えている。 また、平成24年度は2年に1度、韓国、中国、台湾、日本の東アジア諸国の行政法研究者が集う東アジア行政法学会において、日本側の総会報告者として、研究報告「グローバル化と行政法」を行った(平成24年6月9日ソウル、オリンピックパークテルにて)。この中で、国境を越えた連携が考えられる分野として避難法制を挙げ、わが国での取り組みを紹介し、学会における討議及び各種懇親会を通じて、上記諸国の研究者と意見交換の機会をもつことができた。この成果は、宇賀克也教授が責任編集された行政法研究の創刊号に論文として掲載することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記のように、既に平成24年度において2本の論文を公表し、本研究の成果を社会に対して還元することができている。また、東アジア行政法学会を始めとして、外国の研究者とも避難法制に関して意見交換する機会をもち、比較法的な分析を進めることにも成功している。また、最終的な取りまとめに向けて、基本的な文献の収集も進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、本研究の最終年度にあたることから、これまでの研究成果をとりまとめ、分析ができた部分と、今後の課題として残した部分に関して,明示できるよう、研究成果の整理を図ることに努めたい。具体的には、避難法制における避難の位置づけ、方策等については、平成24年度において公表した論文において明らかにすることができたので、次の研究目標として、これを行政法理論一般論との関連で位置づけることにも挑戦してみたい。具体的には、避難法制の中核をなす避難勧告、避難指示といった「行政が発する情報」により市民の行動を制御する仕組みに関する一般法理論、行政の事実行為に関する各論研究を一層進化させたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においては、引き続き、災害に関する現地調査なり訪問調査を通じて、具体的な分析を進めたいと考える。それに要する資材購入なり、交通費に研究費を利用したい。合わせて、避難法制に関する古典的な文献についても、文献研究を進め、これまで進めてきた実証研究なり制度研究を批判的に検討し、その進化を図りたい。このために、引き続き、基本的な文献の収集、購入を行う。また、研究成果のとりまとめについて、外国の研究者との意見交換の機会をもちたいと考えている。そうした会合のほか、成果とりまとめのためにも研究資金を活用する予定である。
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