(1)最終年度である平成25年度においては、前年度までの研究に加えて以下の考察(対象)を加えた。 1.制度的体制における中心的存在が、実は日本では、いわゆる「予定価格制度」であり、これが実質的に重要なモニタリング機能を果たしていることに考察が及ぶに至り、予定価格に対する検討が本研究の更なる特徴的成果となった。我が国では、予定価格と執行額を一致させることで組織的モニタリング対応を重要なものにさせなかったという歴史的経緯が存在し、その点を理解することこそが今後の実務的対応の重要な基点になっていることを明らかにした。同時に、このような形式上の適正化の担保とその揺らぎが、三菱電機による架空請求事件のような予算執行過程における歪み、不正の背景になっていることを明らかにした。つまり、公共調達改革を有効ならしめるには、この予定価格とどう向き合うか、がポイントになるところを明らかにした。かつて金本良嗣が指摘した三点セットのうち「談合」「指名」は最早過去のものとなったが「予定価格」は生き続けている。これが今後の官公需実務にどういう意味を持つか、注目されるところである。 2.2012年に政権復帰した自由民主党は、公共工事における予定価格制度の撤廃のための法改正を模索したが、財務省等からの強い反発にあってとん挫したと聞く。一方、国土強靭化法をサポートするかのような、担い手確保を主眼としたいわゆる「建設三法」の改正への動きが起こり、公共調達法制はますます多様な要素を含みつつある。このような中、モニタリングの在り方も大きな変化を迎えるだろう。この点については、改正法の概要と実務の動向を見極める必要があるので今後の課題とした。 (2) 前年度までの考察及び上記(1)の検討を踏まえた上で、最終的な成果の(書籍あるいは雑誌論文の形での)公刊を準備している(その一部はすでに公表済みである。業績欄参照)。
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