国際法上の犯罪に対する国際責任は、国家責任は国家責任法で、個人責任については国際刑事法・国際人道法というように国際法学上の分野を異にし、責任は主体別に適用法規範も責任追及のための裁判機関も別のものとして扱われる現状を明らかにした。しかし侵略罪や国家が実行又は加担する犯罪、企業が国家と共同して人権侵害を行う例など、国家・個人・企業といった異なる法主体の責任が密接に関連する状況が想定され、これら責任に関する包括的な検討が必要である。国家責任と個人責任は排他的又は択一的な関係にはなく、一方が他方の代替として現実に利用された例はあるが、併存しうるものと考えられることを本研究では示した。
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