研究課題/領域番号 |
23530048
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
酒井 啓亘 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80252807)
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キーワード | 国際連合 / 国連平和維持活動 / PKO / 地域的機関 / 一般国際法 / 国連安保理 / アフリカ連合 / 欧州人権裁判所 |
研究概要 |
本年度も昨年度と同様、主として以下の3つの角度から国連の平和維持機能と一般国際法の関係についての考察を行った。 第一に、最近の国連平和維持活動(PKO)の動向につき、展開継続中のPKOの現状確認および新規展開の活動に関する分析を行うため、関連資料を収集するとともに検討を開始した。特に今年度は、コンゴ民主主義共和国(DRC)において活動中のPKO(MONUSCO)に平和執行機能を備えた部隊が付加されるという新たな展開が見られたため、平和維持と平和執行の新たな関係を理論的に整序する必要が出てきた。 第二に、平和維持機能をめぐる国連と地域的機関の関係についても、引き続き資料収集と分析を行ってきた。今年度は特にマリ情勢における国連、アフリカ連合(AU)、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の関係に焦点を当てて、国連憲章第7章に基づく活動に関する国連と地域的機関の関係について引き続き考察を継続した。 第三に、国連平和維持活動を規律する一般国際法規則の内容についての検討を継続した。欧州人権裁判所や欧州司法裁判所、さらには英国貴族院、オランダ控訴裁判所等の国内判例なども検討対象としつつ、国連国際法委員会(ILC)の「国際機構の責任」に関する議論のフォローアップを行ってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国連平和維持活動や国連憲章第7章に基づく平和活動に関する資料についてはおおむね国連のホームページからダウンロードが可能であり、これらに関する資料収集については、昨年度と同様、比較的順調に進んでいる。この点は、ホームページから資料が入手可能な他の機関、たとえば、欧州司法裁判所や欧州人権裁判所などの国際裁判機関の裁判例、国内裁判所の裁判例の一部、国連国際法委員会のような国連機関などホームページが充実しているところについても同様である。 他方で、地域的機関に関する資料、とりわけアフリカ連合(AU)や西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、南部アフリカ開発共同体(SADC)などの平和維持軍に関する資料については当該機関のホームページからのダウンロードですべて入手できるとは限らないため、その収集についてなお時間を要するところであり、そのため分析作業に若干の遅れが出る可能性もある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に、研究テーマ全般について考察するための視点を定位させることを目的として、広く国連の平和維持活動や憲章第7章に基づく多国籍軍の活動についての分析を行うとともに、国連と地域的機関の関係に関する検討を行う予定である。また、国連平和維持活動や国連が憲章第7章に基づき許可した多国籍軍の活動に適用される一般国際法規則の内実や性格を説明した関連国際判例や国内判例、あるいはそれに基づく国家実行などを検討することが引き続き課題となる。 また、そうした資料収集や現状分析と並行して、国連の機能の拡大とその制約に関する理論的枠組みの構築作業も行われることになろう。 さらに、次年度が本研究計画の最終年度でもあることから、上記のようにして獲得された分析枠組や現状の検討結果を踏まえて具体的な成果を表すことが予定される。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も資料収集と現状の活動に関する分析を引き続き行うことになり、そのための関連書籍等の購入費用が研究費から支出されることになる。また、時期が合えば、アフリカや米州にある地域的機関の本部を訪ね、関連する資料を調査・収集するとともに、現場に通じた関係者へのインタビューも行うことを予定していることから、そのための旅費・滞在費も研究費から工面されることになる。 さらに、研究計画の最終年度ということもあり、この研究で得られた知見を様々なフォーラムで披瀝・討論して具体的な成果につなげることも予定しており、そのための費用も支弁される。
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