研究課題/領域番号 |
23530049
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内記 香子 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (90313064)
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キーワード | ソフトロー |
研究概要 |
24年度はソフトローが影響していく「経路・メカニズム」の要因の理論的考察を続けると同時に、ソフトローの影響メカニズムの実証分析も始めた。年度の初めは、前年度から滞在したUniversity College London(UCL)に研究員として在外研究を6月まで続け、その間に、WTOとソフトローという観点からの理論的考察について論文・分担著書を執筆、24年度内に公表する機会を得た(「WTOにおける科学の役割-SPS協定の限界と近年の体制内の変化」『国際法外交雑誌』第111巻1号、1~19頁(2012年5月);「国際法学との対話-WTOと遺伝子組み換え産品をめぐって」『コンストラクティヴィズムの国際関係論』(大矢根聡編)所収、247~270頁、有斐閣(2013年3月))。前者は、WTO内のSPS委員会によるソフトなガバナンスについて、後者は、グローバルガバナンスにおけるソフトローの役割について検討したものである。 ロンドンを離れて、夏の期間はSingapore Management University(SMU)において在外研究を続け、その間は、第三者認証機関とソフトローという視点で実証研究およびそのまとめを行った。認証機関の具体的例としては、前年度からのGLOBALG.A.P.という欧州を拠点として農産物の認証を行う機関と、新しく調査を始めたアジアのバイオ燃料に関する認証制度を扱った。GLOBALG.A.P.については実証研究のまとめとして英語で論文を執筆し(現在、英文ジャーナルに投稿中である)、バイオ燃料については、シンガポールを拠点とする企業にインタビュー調査を行った。インタビュー調査の結果の一部については、「バイオ燃料をめぐる国際通商(一・二完)」『阪大法学』第62巻5号95~113頁、第62巻6号21~50頁(2013年1月、3月)に公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度の目的は、ソフトロー研究に関する理論的レビューの継続とまとめ、さらに実証研究を始めることにあった。理論的枠組みについては、前年度からのレビュー結果を論文と分担著書にまとめる機会が得られ、目的を達成することができた。 また、実証研究については、どのような実証的な研究が学問的に必要とされているかという点において、当初の計画ではWTOを対象にジュネーブでの委員会レベルの聞き取り調査を予定していたが、ロンドンとシンガポールでの在外研究、また海外の研究者との意見交換により、プライベート・レジームという第三者認証をめぐるソフトローという検討の視点を得て、研究の新規性を深めることができたのが収穫であった。さらに、ロンドンとシンガポールでの在外研究という場所的な利点を活かして、GLOBALG.A.P.に関するインタビュー調査を続けることができたし、さらにバイオ燃料に関する認証制度のアジアでの調査も開始できた点は進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり、次年度は実証的研究のための聞き取り調査を中心に行う。同時に、ソフトローがどのような「経路・メカニズム」によって影響を与えるのか、という理論的部分について、見直しや修正の必要がないかに常に配慮し、実証研究をしながら、再検討することとする。ケース・スタディについては、当初予定していたWTOにおけるソフトローの動向のほか、ソフトローを形成しているプライベート・レジームの動きも取り扱うこととし、24年度から調査を開始したバイオ燃料に関する企業や第三者認証制度の調査を深めていくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
インタビュー調査を中心とした実証研究を行うために費用を使うという点について研究計画に変更はなく、前年度の残りの研究費を含めて、当初の予定通りに計画を進めていく。とりわけ、24年度に滞在したシンガポール以外のアジアの国を中心とした調査を深めることを予定している。
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