研究概要 |
本年度は、これまでの理論研究を踏まえた実証研究のまとめの段階であり、それを英文雑誌に公表することまで視野に入れて取り組んだ。実証研究としては、主として、農産物の生産過程に関する基準(食品安全・環境保全・労働者保護などの包括的基準)を扱った。具体的には、WTOのSPS委員会でも議論されたことのある、‘GAP(Good Agricultural Practice;農業生産工程管理)’とよばれるソフトな基準を取り上げた。それが日本・米国・タイの国内でどのように浸透・拡散しているかを分析し、まとめた。 とりわけ、GLOBALG.A.P.という欧州を拠点としているプライベート・アクターが策定した基準と、政府レベルやローカルなレベルで取り組まれているGAP活動との関係性に注目しながら検討をおこなった。調査を行った日本・米国・タイにおいても、様々な形や場面で、GLOBALG.A.P.が受け入れられたり、あるいは拒否されたりした事情がみられた。世界的な普及の勢いがあるGLOBALG.A.P.であっても、各国の農産物の生産条件や環境が異なることから、ローカルな事情を考慮しなければ、GAPの理念やアイデアが広く普及しないことが分かった。 この成果は、“The Dynamics of Private Food Safety Standards: A Case Study on the Regulatory Diffusion of GLOBALG.A.P.,” International & Comparative Law Quarterly (ICLQ) Vol.63, No.1 (2014)として、公表することができた。当初の計画以上に進行し、ソフトな基準の国内への効果を実証研究として行うことができ、それを成果として英文雑誌に掲載できたことで、研究の到達点が見えた。
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