本研究は国際取引における契約規範の形成過程において、市場がどのような形で影響力を持ち活用されているのか、また活用される可能性があるのかを法律学の視点から明らかにすることを目指すものである、本年度は成果の統合を目指し重要な知見をもつ研究者実務家と積極的に意見交換を行った。 まず5月には海外の実務家からASEANのビジネス法務の情報提供を受けた。5月と12月には国際仲裁の実務経験を持つ2名の実務家とのワークショップを行った。6月にはEUの複数の研究者と、市場統合と国際私法ルールとの関係について議論した。9月にはモンゴルの大学と法律事務所を訪ね、グローバルな市場化に対応する法学教育の在り方について協議した。10月末にはUNCItRALのサポートを得て、投資協定仲裁の進展がアジアの市場化にどのような影響をもつのかを議論するシンポジウムをオーガナイズした。中国・韓国・アメリカ・日本の実務家・研究者・官僚・仲裁機関関係者を報告者として招き、包括的な議論を行った。11月には台湾の政治大学法学部で、日本の民法典起草における旺盛な比較法的情報吸収の過程を分析する報告を行った。12月にはクアラルンプールにおいて、マレーシア国立大学と法律事務所JLPWの協力を得て、法律学と経済学の視点を融合して市場化進展を分析するシンポジウムを開催し、そうした研究方法の可能性を確認した。3月初旬にはパリ13大学法学部の客員教授としてパリに滞在しEUにおける域内市場活性化に向けた法的対応について調査研究を行った。3月中旬には、香港において仲裁実務家と情報交換を行うとともに、模擬仲裁大会の仲裁人役を務めグローバルな法律実務や法学教育方法の進展に関する情報交換と意見交換を行った。 このようなプロセスを通じて、本研究を統合するために必要とされる知見をほぼ獲得することができたと考える。
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