研究課題/領域番号 |
23530052
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
桐山 孝信 大阪市立大学, 大学運営本部, 副学長 (30214919)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 世界法研究 / 国際法学 / 戦間期国際社会 |
研究概要 |
2011年度は、戦間期における日本の世界法研究をリードした恒藤恭について「文学的『世界民』から科学的『世界民』へ」と題する論考を、大阪市立大学史紀要に掲載した。これは、第1次世界大戦後から興隆してきた日本における社会科学研究の豊かな成果をくみ取りながら、国家間関係を規律する国際法が、個人間および国家と個人を規律する国内法と結合して新たに世界法として登場してきたことを考察したものであり、現在のグローバル化現象を解明するための手がかりにもなるものとして位置付けた。とくに重要なのは、恒藤の研究では第1次大戦直後に発表された論文がドイツ観念論=理想主義の哲学を下敷きにして、カントの平和論を国際連盟が登場した社会状況に合わせて創造的に展開したのに対して、1930年前後の論文が、基本的な姿勢は崩さないものの、世界経済の構造分析を基にした世界法の可能性を追求していたことである。 また戦間期に特徴的な現象として現れたマイノリティの国際的保護体制についてその歴史的意義や国際社会の変容とのかかわりを、孝忠延夫編『差異と共同』に「国際法学におけるマイノリティ研究の過去と現在」という論考で検討した。これは、国家間関係を規律する国際法が、マイノリティという国内法的処遇の問題とされていた事項を取り込むようになった事情を明確にするものである。一方では、国際連盟体制という国際制度の確立が直接の要因であったこと、他方では帝国主義諸国間の紛争要因を事前に緩和し、国際経済の破局を避けるための装置であったことを指摘した。マイノリティ問題の処理に当たっても、国内社会と国際社会が相互に浸透していることが前提となり、世界法的視点が内在されていることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、国内の世界法ないしそれに密接に関連する研究業績を検討するとともに、フランスやドイツ、アメリカといった海外の研究について文献収集、整理・分析を行うこととしていたが、上記に挙げた業績および文献研究によって国内の研究については順調な研究がすすめられたものの、海外の研究状況の把握については、予定していた海外での文献収集や海外の研究者との意見交換などができなかったため、当初よりもやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き文献の収集・整理・分析を進めるとともに、今年度は国際会議の開催時期をとらえて海外に出張し、本テーマに造詣の深い研究者と意見交換を行う。また海外の世界法研究については、網羅的に検討することは到底無理なので、現在アメリカを中心に進められているグローバル行政法の議論を参照しつつ、それと比較した場合に日本の戦間期世界法研究がどのように捉えられるかを検討したい。そうすることによってグローバル行政法に関心を持つ海外研究者との意見交換が実り豊かなものとなり、本研究にも大いに役立つと思われるからである。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の推進方策を実現するために、研究費の多くは文献収集及び海外出張にあてたい。とくに文献に関しては、グローバル行政法に関係する図書や関連の社会科学分野の図書の購入にあてる。また海外研究者との意見交換に当たって参考に供するため、本年度公表した論文を増補・改訂する形で英文化する。そのための研究補助、校閲費などに使用する計画である。
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