研究課題/領域番号 |
23530063
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
和久井 理子 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 特別研究員 (50326245)
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キーワード | 国際情報交換 / 英国 / EU / 米国 / 香港 |
研究概要 |
本研究の目的は、自由競争が導入され、グローバル化が進む中で、消費者が公正に便益を受けることができるようにするための法制 度のあり方と発展の可能性を、食品分野に焦点をあてて検討することである。この目的を達成するために、平成24年度には、①消費者保護ならびに食品にかかる法規制の比較研究と、②独禁法・WTO法上の判決・決定・法学理論の研究を行うことを予定していた。 ①については、食品分野において東日本大震災の影響を受けて風評被害及び買控えの問題が起こっていることを受けて、市場において適正な情報が伝達されるようにするための規制のあり方について調査研究を行った。検討の結果、独禁法上の規制の在り方に未解明の問題が残されていることが分かり、営業誹謗・信用毀損行為にかかる独禁法上の規制のあり方に関する論文を執筆した(平成25年度中に公刊予定)。 ②については、優越的地位の濫用規制についての検討を進めた。この問題は特に食品納入業者と大規模小売業者間の取引の公正性にかかわっている。香港の研究者と共同で英語論文の執筆を進めると同時に別途単独でオーストラリア法について調査し、日本民法・消費者法とのかかわりについてこれら分野の研究者の参加する大学内研究会で報告・議論を行い、経済法研究者の参加する研究会において購買力の形成に関する米国企業結合事例について報告を行った(平成24年7月まで)。また、食品表示規制(米国・食肉原産地表示規制)に関するWTO・TBT協定に基づく決定(2012年6月上級委員会報告書)について調査し大学内で報告を行った(平成24年6月)。その他、経済法一般に関する文献・判例評釈の執筆、データベース構築などを行った。 その後、平成24年8月に頸椎・腰椎に怪我をし研究を中断せざるを得なくなった。その後は回復後の研究再開に備えて可能な範囲で文献・情報の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成24年8月に研究代表者が頚椎・腰椎を捻挫する等の事故に遭い、その後平成24年度末まで病状が回復せず治療が必要になったため、平成24年8月・9月、平成25年2・3月の渡航(現地調査及び共同研究)、これらの事前準備及び執筆作業を遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年5月に怪我からほぼ回復し、研究を再開する目途がほぼ立った。平成24年度中に収集した文献等を利用して、研究活動を行うことができなかった期間(約8ヶ月)に行う予定であった研究を再開し進めていきたい。内容については上記「研究実績の概要」①②どおりである。とくに成果公表の方法については平成24年度実施状況報告書「今後の研究の推進方策」に記載したとおり、直接食品に関わるのでなくとも公表の機会が得られるようであれば積極的に活用して成果を還元するようにしたい。 海外調査については、欧州、英国、米国、香港などを予定していたが、海外調査により故障が再発する可能性があることも踏まえて平成26年度への延期及び招聘又はこれら各国からの研究者が参加する国際研究会への参加等で替えることを柔軟に検討することとする。 このような移動上の制約がある中で効率的に研究を進めるためにも、消費者・不公正取引問題については文献調査、国内判例及び立法・法改正動向の調査研究に注力したい。また、不公正取引及び競争阻害型行為については、独禁法分野において近時、①安全性確保・消費者保護に関する規制の公的規制の濫用事例、②営業誹謗行為等不公正な競争手段による排除行為、③食品流通サプライチェーンにおける購買力形成及び濫用問題、及び④優越的地位の濫用について注目される規制・立法事例が日本内外で増えている。団体訴訟など効果的な執行システムの構築も問題となっている(⑤)。平成24年度研究実績及び研究者の従来の研究の蓄積をいかして特にこれら①ないし⑤の事項については、現在の状況が作り出す必要にこたえることができるよう研究調査を行い成果の共有を進めることとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
経済法・消費者保護法(邦語)、国際経済法、欧州競争法・取引法、オーストラリア競争・消費者保護法に関する文献の収集が続けて必要であり、次年度研究費を使用してこれらを行うことを計画している。 旅費としては、国内では聞取調査及び研究成果報告等のために出張を行うことを予定している。国外については、アジア各国の経済法研究者が参加する国際学会(シンガポール)に参加する予定があるほか、論文執筆の進展状況により香港、欧州に出張する予定がある。 英語校正及び資料整理について、平成24年度中にできなかった執筆・整理作業を進めるために次年度研究費を使うことを計画している。
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