研究課題/領域番号 |
23530066
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
石橋 敏郎 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (60151403)
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研究分担者 |
天野 拓 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (20572746)
木場 千春 (長 千春) 西九州大学, 公私立大学の部局等, 助教 (60369098)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 最低所得保障制度 / ワークフェア / 求職者基礎保障制度 |
研究概要 |
平成23年度は、石橋と天野は、生活保護受給者の就労自立支援プログラムの実施状況について知るために、釧路市、東京都板橋区、横浜市の3箇所に出向いて、担当職員から聞き取り調査並びに資料の収集を行なった。雇用状況の悪い釧路市では、稼動能力ある生活保護受給者には、賃金雇用(経済的自立)ではなく、ボランティア活動に従事するなどして働くことの喜びを知ってもらうような方策を採っていること、板橋区は、就労自立支援プログラムのモデル地区となったことで知られており、生活保護受給者のおかれた状況や背景などに応じて細かな個別支援プログラムを作っていること、横浜市は、市の予算で就労支援専門員を配置して、履歴書の書き方から面接の受け方まできめ細かな指導を行なっているなど、自治体で工夫しながら独自の就労自立支援プログラムを実施していることがわかった。木場は、東京の研究会に出席して、生活保護の現状とこれからの生活保護制度の課題について学んだ。その成果の一部は、石橋敏郎・坂口昌宏・河谷はるみ・木場千春「生活保護制度における就労自立支援の問題点」アドミニストレーション第18巻3・4合併号(熊本県立大学総合管理学会、2012年3月)に掲載され、また、石橋敏郎「所得保障法制とナショナルミニマム」新社会保障法講座第3巻(法律文化社、2012年6月)として刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究タイトル「所得保障における最低生活保障と社会的統合に関する研究」のうち、23年度は主として、稼働能力のある生活保護受給者に対する就労自立支援プログラムについて、先駆的な試みを行なっている国内の自治体(3箇所)に出向いて実施状況調査を行った。社会的統合の一形態である、生活保護受給者を雇用へと結びつける方策の意義と問題点を検討してきた。本研究の目的は、(1)最低所得保障制度とはどのようなものをいうのか、生活保護制度だけに頼るのではなく重層的な最低所得保障制度とはどのようなものか、(2)社会的統合を果たすための方策のひとつである就労支援策の意義と問題点、特に、受給者の就労への取組姿勢によって最低所得保障が左右されることがあるのかどうか、その是非、(3)最低所得保障と就労促進政策とはどのような関係にあることが望ましいのかの3点にあるが、23年度は(2)について調査と研究を行なった。形式的には達成度は3分の1ということになる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進め方としては、24年度は、石橋と天野は、ワークフェアと呼ばれる生活保護受給者の雇用促進計画を1960年代から実施してきたアメリカ合衆国に出張して、ワークフェアが登場してきた背景、実際の実施状況、生活保護受給機関を最長5年、連続して2年というように期限をつけたアメリカの「一時的扶助」(TANF)についての聞き取り調査及び資料収集をする予定にしている。25年度は、社会的統合という用語を始めて使ったヨーロッパ(ベルギーかドイツ)に出かけて、社会的統合という用語が出てきた背景、アクティべーションなどのヨーロッパ型就労自立支援策の研究、失業者と稼働能力ある生活保護受給者を「求職者」として一元化したドイツの求職者基礎保障制度などについて調査・研究する予定にしている。木場は、引き続き国内の生活保護受給者の就労支援と新しくできた「求職者支援制度」の研究に携わることにしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成24年度)は、主としてアメリカのワークフェア制度についての研究を行なう予定である。石橋と天野は、9月頃にアメリカ合衆国のカリフォルニア州のロスアンゼルスかマサチューセッツ州ボストンに出張して、ワークフェアの現在の実施状況、最近の傾向と課題、受給期間を制限した生活保護制度TANFの現状などについて、調査、資料収集、研究に従事する予定である。したがって、24年度予算の大半は、石橋と天野はアメリカ合衆国出張旅費と滞在費、通訳謝金に当てられることになる。木場は、国内の生活保護受給者の就労支援と新しくできた「求職者支援制度」の研究に携わることにしているので、木場の予算は、国内の福祉事務所での調査費用(旅費)と物品費に充当される予定である。
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