研究課題/領域番号 |
23530068
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
橋本 陽子 学習院大学, 法学部, 教授 (00292805)
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キーワード | 労働者概念 / 労働契約 |
研究概要 |
平成25年度は、典型的な労働者と自営業者(事業者)の中間に位置する就労形態について、いかなる労働法上の保護を及ぼすことが可能かどうかについて検討を行った。この問題は、1997~1998年にILOによって提唱された「契約労働(contract labor)」の規制に関して注目されたが(拙稿・「『契約労働』(Contract Labor)」角田邦重ほか編『労働法の争点(第3版)』277-278頁、2004年、有斐閣)、最近、労組法上の労働者性をめぐる最高裁判決が相次いだことをきっかけに、改めて、労働組合法上の労働者と労働基準法上の労働者との異同について、議論が活発になっている。 研究代表者は、この問題に関連して、最高裁が、労組法上の労働者性判断において重視した「事業者性の有無」について、差戻審判決の検討を行い、成果を公表した(「労組法上の『労働者』性判断における事業者性の意義―国・中労委(ビクターサービスエンジニアリング・差戻審)事件―東京高判平成25・1・30」ジュリスト1463号111-114頁、2014年)。しかし、労基法上の労働者ではないが、労組法上の労働者である者をいわゆる「第3のカテゴリー」として位置づけることの是非については、十分に見解をまとめることはできなかった。この問題について、研究代表者は、以前ドイツにおける「労働者類似の者」について検討を行い、その結果から、日本法における同様の「第3のカテゴリー」の導入については消極的であるが、ドイツと同じく「第3のカテゴリー」を有するイタリアおよびスペインの法規制について、研究を進めたが、語学力の制約から、十分な成果を得ることができたとは言い難い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
労働者と自営業者の中間に位置する就労形態(いわゆる「第3のカテゴリー」)の概念を日本において認めるべきか否かについて、論文をまとめるには至らなかった。平成26年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度において、今年度に十分な成果を上げることができなかった問題(労働者と自営業者の中間に位置する就労形態を特別な法的カテゴリーとして構成すべきか否か)について引き続き検討を行うとともに、労働者と社会保険の被保険者の範囲の異同、民法における雇用・請負・(準)委任契約との関係について、検討を行い、本研究課題の目標である「労働者の判断基準の定立」にむけて、さらに研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、思ったよりも研究が進まなかったこともあり、使用額が少なくなった。 平成26年度は、ドイツでの資料収集およびインタビューの実施を予定している。また、パソコンも購入する予定であり、旅費および物品費で相当の支出が見込まれる。
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