本研究課題の最終年度である平成27年度は、労働法の適用対象者である「労働者」の判断基準について引き続き検討を進め、伝統的に、民法の雇用契約に基づく典型的な就労であり、使用者の指揮命令に服して労務を提供するという労基法の「労働者」性の判断基準を満たしているものの、労基法の適用が除外されている「家事使用人」について判例評釈を執筆した。 また、平成27年度においては、最近の重要な労働契約の論点である、企業組織再編時における労働法上の権利保護の問題について、EU法・ドイツ法における労働条件の保護について検討を行ったほか、日本法については、派遣・請負を含む、広義のアウトソーシングにおける労働法上の保護の問題として検討を進め、論文にまとめた。 その他、有期雇用についても検討を行い、労契法18条の無期転換ルールの特例を定めた「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(有期特措法)」について検討を行ったほか、判例評釈を執筆した。 さらに、日本でも平成28年4月から施行されている障害差別の禁止に関するEU法の判例紹介も行った。 本研究課題の最終的な目的である「労働者」の判断基準について、試論を提示できる段階まで研究をまとめるまでには至らなかったが、労働法の人的適用範囲の問題である「労働者」の検討と並んで、今後は、場所的適用範囲である「事業」または「事業所」概念についても検討を進め、最終的に労働法の適用範囲に関する研究をまとめていきたいと考えている。
|