研究課題/領域番号 |
23530072
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
洪 淳康 金城学院大学, 生活環境学部, 講師 (10554462)
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キーワード | 国際情報交換 / 独占禁止法 / 差別対価 / 韓国 |
研究概要 |
事業者である供給者が、同一の商品役務について、ライバルである他の供給者との競争が激しい市場では安い、そうではない市場では高い対価を設定することにより、ライバルである他の供給者を排除しようとすることを略奪廉売型差別対価(以下、差別対価)という。 日本とほぼ同じ独禁法制を有する韓国における差別対価の体系的分析を行うため、まずは、ネットを通じて韓国公正取引委員会が出した審決文や報告書を収集した。次に、差別対価に関連して韓国の最高裁判所の判決文も収集した。さらに、韓国の現地調査により、韓国の最新関連論文や韓国公正取引委員会の白書などを集めつつ、韓国公正取引委員会の関連団体である、「韓国公正競争連合会」を通じて各種資料収集及び意見交換を行いながら、韓国の研究協力者である、誠信女子大学法学部のファン・テヒ准教授の協力を得て、各種資料を手に入れることができた。最後に、東京大学大学院法学政治学研究科の図書館での継続的資料収集及び東京大学大学院法学政治学研究科の欧米経済法判例研究会への出席を通じて、日本及び欧米の最新資料も集めてきた。 これらの活動により、差別対価がどのような条件で違反になるかについて韓国と日本、欧米の諸費用基準、市場における地位、主観的意図、継続性などについて資料を集めることができた。 差別対価は、日韓ともに広く行われている行為であり、近年、事例や学説が蓄積されつつあるが、違反となるための法構造についての分析は日韓ともにまだ不十分である。このような環境のもとで、日本とほぼ同じ独禁法制を有する韓国との差別対価規制との比較によって日本の差別対価規制における違反要件を明確化させることは、合法的な価格競争とそうでないものの区別に役立ち、一般消費者の利益の向上につながると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度においては、ネットによる、継続的な日本(欧米含む)と韓国の資料収集はもちろん、日本・欧米(東京大学法学政治学研究科)及び韓国での資料収集(韓国公正競争連合会、韓国国会図書館、韓国中央図書館など)、聞き取り調査(韓国公正競争連合会、ソウル大学の経済法担当教授で元韓国公正取引委員会委員長の権五乗教授など)によって、差別対価規制に関する日本(欧米含む)の最新資料はもちろん、韓国の最新資料(審決、白書、ガイドライン、論文、インタビュー、独占禁止法専門雑誌、未公開判決例など)を集め、分析を行うことができた。 これにより、前年度からの、コスト割れの要素(費用基準)はもちろん、コスト割れ以外の要素(差別対価行為者の市場における地位、意図・目的、期間など)がどれくらい違反となる差別対価の要素となっているかについて分析を行うことができた。そのほかにも、これまで知られてきた費用基準以外の、新しい費用基準の存在についても事例を集め、分析を行うことがきた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降については、まず、引き続き、韓国の資料収集(ネット、現地調査)によって差別対価の違反要件を補強・精緻化しながら、かつ発表のための準備(整理)にとりかかる計画である。資料収集の場所としては、韓国公正競争連合会、韓国競争法学会、韓国国会図書館を考えている。 また、日本及び欧米についても東京大学法学政治学研究科を中心に進める予定である。そこで新しい資料を収集しつつ、これまでの研究を補強・精緻化し、かつ発表のための準備(整理)のとりかかる計画である。10月、日本経済法学会で、中間報告として、差別対価における日本と欧米の構造の違いを発表する予定である。 さらに、最終的な日韓の比較については、韓国の公正競争連合会が出している「競争ジャーナル」(または韓国競争法学会)及び東京大学法学政治学研究科の「ソフトロー研究」での発表を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
まずは、韓国へ継続的な資料収集及び聞き取り調査を計画している。その際は、現地で独占禁止法関連書籍などを購入する予定である。また、東京大学法学政治学研究科へも日本及び欧米の資料収集などのため行く計画であり、その際、の資料の購入も予定している。さらに、中間報告として、10月、差別対価の違反要件について日本と欧米との比較発表を日本経済法学会で行う予定であり、そのための資料も購入する予定である。最終報告は韓国の公正競争連合会が発刊している「競争ジャーナル」と東京大学大学院法学政治学研究科が発刊している「ソフトロー研究」での発表を考えているが、そのための資料購入も必要である。
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