研究課題/領域番号 |
23530073
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
本庄 武 一橋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60345444)
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研究分担者 |
三島 聡 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60281268)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 刑事法学 / 量刑 / 裁判員制度 / 量刑事情 |
研究概要 |
今年度の実績は以下の通りである。 第一に、裁判員裁判の判決書を収集し、量刑の理由の項目につき、分析を行った。その結果、当事者の主張に沿って理由を示すもの、先例における量刑分布に言及するものなど従来見られなかった一定の様式があることが明らかになった。また、研究分担者三島は、工学系研究者と連携し、量刑事情キーワードの自動抽出に関する研究を行い、関連学会で報告を行った。 第二に、裁判員裁判での量刑審理及び評議の進め方につき、制度に即した研究を行った。まず個別事件での評議内容に関わらない範囲で、裁判官に対しインタビューを行った。また、量刑問題に詳しい弁護士から裁判員裁判での量刑に関して問題となっている点についてインタビューを行った。これらにより有用な知見を得ることができた。さらに言語学の研究者と連携し、裁判員裁判における評議の分析方法について研究を進め、関連学会でワークショップを行い、成果を報告した。最後に、研究代表者本庄は、被告人自身に関わる背景的事情を法廷に顕出するための有用な手法である判決前調査制度について、日本において存在しない理由、存在しない中でいかなる対応が取られてきたのかについて考察し、関連学会で報告を行った。 第三に、量刑問題に関連する理論研究を実施した。研究代表者本庄は、少年事件の裁判員裁判で死刑判決が下された事件について事例研究を行ったほか、裁判員裁判の上訴審での量刑審査のあり方について研究を行い論文を執筆した。後者においては、上訴審が原審の量刑に介入できる根拠論を通じて、量刑の法化が進行している可能性を指摘した。研究分担者三島は、量刑資料ともなり得る被告人自身の法廷での陳述を証拠として扱える範囲について研究を行い論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度においては、基礎的な資料の収集に重点を置くこととなっていたところ、判決書の収集、実務家へのインタビュー調査等を通じてある程度の資料を収集することができた。もちろん資料収集作業は今後とも継続していく必要はある。 理論研究においては、量刑の制度的枠組みに関する研究に重点を置き、成果を公表することができた。これは平成24年度以降に量刑事情の法的評価のあり方という本研究の本体に属する研究を推進していく上で基盤となるものである。 なお、研究計画で予定してもののうち、比較法研究について、当初予定していた量刑ガイドラインの研究を十分に行うことができなかった点は若干問題である。もっとも理論研究を進める中で英米法の知見を研究しており、一定程度は達成できている。 総体としては、平成24年度以降本格的に研究を進めていく上で必要とな事柄について研究を進めることができ、概ね順調に進展していると評価できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って研究を進めて行く。 第一に、平成23年度に引き続き裁判員裁判での量刑の実情について調査研究を行う。 第二に、実務上特に問題となっている量刑事情に重点を置いて、理論研究を進める。さしあたり、被害感情に重点を置いた研究を実施する予定である。 第三に、比較法研究として海外調査を実施する。対象国は近時量刑ガイドラインを漸次的に導入しているイングランド・ウェールズを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
端数残金として3万円程度の研究費が未使用額として生じているが、資料収集のための物品購入に使用する。基本的に研究費の執行計画に変更はない。
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