第1に、2013年度において、裁判員裁判における量刑の実情について、裁判実務家からの聞き取り調査を実施した。その結果、評議の過程では付箋紙を用いるなどして裁判員が重視する量刑事情を可視化する工夫が行われるなどしていたが、最終的な刑量の導出過程にはなお不透明な点が残り、この点をいかに統制するかという課題が残ることが明らかになった。2012年度までの成果とあわせると、量刑の当事者主義化が進行する中で、量刑データベース以外の有効な統制手段を検討する必要性があり、その際にはイギリス法などの知見が有用となる。 第2に、2013年度において、2012年度までに引き続き、裁判員裁判の判決書の研究を行った。裁判員裁判施行当初は裁判員が参加して行われた量刑判断がかなり尊重される傾向があったが、2013年度に至って、裁判員量刑尊重の流れに一定程度歯止めがかかったように見えた。こうした動向は理論的にも是認できるものであると考えられた。 第3に、量刑事情の理論的検討については、2013年度において、対立が最も先鋭化する少年事件での量刑に関して法改正の動向が具体化したため、喫緊の課題として検討を行った。その結果、裁判員裁判実施当初に見られた社会記録の限定的採用、鑑定に対する消極的姿勢には変化が見られ、少年の裁判員裁判において適正な判断を実施するために不可欠な少年自身に関わる情報の不足の問題は一定程度改善の兆しが見られたが、当該事情の評価のあり方が明確でないように思われたため、方向性を提示した。また併せて、法制審議会刑事司法制度特別部会で議論されている、刑の減免制度及び協議・合意制度についても、量刑事情論として見過ごせない問題があったため検討を行った。
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