研究課題/領域番号 |
23530074
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松田 岳士 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70324738)
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研究分担者 |
高山 佳奈子 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30251432)
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キーワード | 国際刑事法 / 国際司法共助 / 犯人引渡し / 国際刑事裁判所 |
研究概要 |
研究代表者および研究分担者は、前年度に引き続き、国際刑事法の実務・理論に関する情報および知見を得ることを目的として、それぞれ、欧米の関連文献・情報を収集し、分析を進めた。平成25年1月16日には、研究代表者および分担者参加のもと、旧ユーゴスラヴィア国際刑事裁判所元判事であるアルビン・エーザー教授をお迎えし、京都大学において国際刑事法に関する意見交換会を行った。 個別的には、研究代表者(松田)は、平成24年11月から3月まで、ほぼ毎週(木曜)、国内刑事訴訟法を専攻する大学院生(大阪大学大学院博士後期課程在籍の岩崎正氏)と国際刑事裁判所等の超国家的裁判所に関心を持つ国際法専攻の大学院生3名(大阪大学大学院博士後期課程在籍の越智萌氏、山下渉氏、同博士前期課程在籍の松山沙織氏)の参加を得て、「国際刑事法研究会」を開催し、「ルバンガ事件」に関する国際刑事裁判所の判例を刑事法・国際法双方の観点から分析すると同時に、関連文献を講読・検討した。 他方、研究分担者(高山)は、平成24年5月18日に、フライブルク大学名誉教授ヴォルフガング・フリッシュ教授を招いて京都大学において比較刑法理論に関する研究会「諸原理の縮図としての緊急避難法制」を開催し、その後、意見交換の機会を持ったほか、2012年6月1-2日にフランス破棄院および司法研修所にて開催された、第19回国際刑法会議「情報社会と刑事法」の準備会合に参加し、2014年に開催予定の本会議に向けた分科会別の予備シンポジウムの内容を協議した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の達成目標は、研究初年度においてヨーロッパの国際刑事法研究が終了していない場合にはこれを継続するとともに、その結果得られた知見を参考にしながら、国際刑事法学の体系化および理論枠組みを構築することにあった。 国際刑事裁判所等の超国家的裁判所の実務・理論状況に関しては、資料・情報収集を進めるとともに、国際法を専攻する院生と勉強会を開催した結果、その全体像が見えつつある。とりわけ、そこでは、国際法的な問題と刑事法的な問題がどのような形で関わり合っているか、また、日本国内の刑事法に関する従来の議論が、超国家的裁判所の実務・理論の解明にとくに有用であること、そして、これを具体的にどのような形で応用すれば、超国家的国際刑事法学の発展に寄与しうるかが判明した。その意味で、超国家的裁判所に関する国際刑事法学の体系化の準備は、一定程度整ったといえる。今後は、個別論点について、これを具体化していくことが課題となる。 他方、司法共助、犯人引渡等の国家間の国際協力の問題の検討はやや遅れているが、超国家的裁判所の実務・理論に関する解明と並行して研究を遂行していけば、その対比のなかで、自ずとその理論的分析が進むものと見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においても、これまでに収集した資料・情報等を基礎として、引き続き「国際刑事法」を体系化し、国際的な犯罪処罰における理念と実効性の均衡を実現するための理論的構築を進め、その完成を目指す。 その際には、国際刑事裁判所の実務・理論についてより踏み込んだ研究を行うことにする。国際刑事裁判所については、実務・理論が相当程度蓄積しつつあるが、そこでは、大陸法的な発想と英米法的な発想の対立が顕著にみられるところであり、まさしく大陸法的な制度と英米法的な制度を受け入れ、その理念を対比して議論してきたわが国の刑事法学説が、その理論的発展に寄与する余地は大きいと思われる。そこで、本年度においては、国際刑事裁判所制度に関する個別の論点をめぐる議論の妥当性を、刑事法・国際法の両面からわが国の学説と対比しながら検討することを通じて、超国家的な刑事司法に関する諸問題の検討枠組みの構築を図る。並行して、刑事司法の分野での国家間の協力についても、超国家的な刑事司法との関係を念頭に置きながら、関連諸問題の理論的な検討枠組みの構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度である平成25年度においても、引き続き、国際刑事法に関する国内外の文献・資料・情報の収集を継続する。そのために、関連書籍等を購入し、また、研究代表者・分担者が国内外において資料・情報収集を行うための旅費が必要となる。 また、今年度も、海外の情報の提供していただき、議論を深めるために、外国から研究者を招へいすることも考えている。その他、若干の情報機器関連物品についても、情報管理の効率化のため、購入の必要が見込まれる。
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