今年度は、証拠調べのバイアス効果のうち特に、近時、関心が集まっている裁判員裁判の量刑バイアス問題を中心に研究を行った。2013年10月13日(日)に、九州大学において開催された、法と心理学会主催(日本学術会議法と心理学分科会共催)の公開シンポジウム「裁判員裁判と量刑不当」を企画し、量刑バイアスの発生メカニズムとそれに対する法的規制のあり方につき、三本の報告と討論を行うことができた。当該シンポジウムの成果については、学会誌である『法と心理』に掲載予定である。 また、2014年3月15日に開催された九州事実認定研究会において、「裁判員裁判における量刑バイアスとその制御」というテーマで研究報告を行った。当該報告については、今後、さらに細部を補充して、論文として公表する予定である。 さらに、判例解説として、証人尋問の際の記憶喚起のための書面提示の在り方が争点となった、最高裁平成25年2月26日決定(刑集67巻2号143頁)をとりあげ、供述者の記憶を歪めない書面の提示の在り方につき考察を行い、Web版の判例解説として公表した。 最後に、本研究テーマとの直接的な関連はないが、本テーマとも関係する問題として、二つの研究成果を得た。ひとつは、取調べ過程の有益な立証手段として注目されている取調べの録音・録画につき、法制審議会特別部会における中間取りまとめを受け、その在り方を検討した論文を執筆した。当該論文は、犯罪と刑罰第23号において公表予定であり、すでに校了している。また、裁判員裁判の判決に対する控訴審における事実誤認審査の在り方が争点となった、最高裁平成25年4月16日決定(刑集67巻4号549頁)をとりあげ、経験則を基準とする事実誤認の審査の内実につき考察を行い、判例解説として公表した。
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