フランスをはじめとする欧州諸国では、近時、被害者保護を1つの根拠として、移動型電子監視や保安監置といった、さまざまな保安処分ないし保安的措置が立法的に導入されてきた。しかしながら、実際上、これらの措置が実効的に被害者保護を担っているという実態は依然確認されえない。 移動型電子監視については、当初の導入時には、同措置のもちうる、再被害の防止や潜在的被害者の保護の点が強調されたが、その後は、同措置の人権制約的・侵害的側面が指摘されている。他方で、移動型電子監視は、ハード面、ソフト面の双方で、実施を困難にするような問題を抱えている。まず、移動型電子監視の実施状況は、地域によって大きく異なる。移動型電子監視に必要な施設の整備、要員の確保が特に地方ではネックとなっている。また、移動型電子監視は、社会内処遇の1つのヴァリエーションである以上、その前提として、環境調整等が重要な位置を占めるが、保安処分として実施される移動型電子監視の対象となるのは比較的重大な犯罪であり、環境調整が困難を極め、この点も、同措置の積極的活用を妨げる一要因となっている。保安監置については、よりいっそう、その人権侵害的側面が問題視され、同制度自体、見直しを迫られているといえる。 2013年度に至っても、移動型電子監視及び保安監置の実施状況は非常に低調で、同制度を導入した立法者意思と実務の間の溝は依然埋まっていないのが現状である。犯罪被害者保護を加害者に対する措置で図ることにはやはり限界がある。今後は、再犯予防の観点から改めて保安処分ないし保安的措置を検証する必要があろう。
|