研究課題/領域番号 |
23530082
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
斎藤 司 龍谷大学, 法学部, 准教授 (20432784)
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研究分担者 |
赤池 一将 龍谷大学, 法学部, 教授 (30212393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 拘禁回避 / 民間団体 / ドイツ / フランス / 聞き取り調査 |
研究概要 |
日本やドイツの被疑者・被告人の拘禁回避のための社会的援助について研究を行った。刑訴法上の原則である無罪推定原則を前提として、あるべき拘禁回避制度の具体的あり方を検討した。本研究との関係では、その具体的制度の担い手の検討が重要となる。この目的のためには、刑事手続における身体拘束制度や刑罰、さらには行政機関の関わり方を検討する必要がある。そのために、刑法や刑罰論に関する重要文献、憲法や行政法に関する重要文献を入手し、上記手続に関する民間団体の関与のあり方、それへの行政機関の関与のあり方を検討した。具体的には、無罪推定原則を前提とすれば、刑事手続における身体拘束を行う国家機関(拘置所や留置施設)は、身体拘束がもたらす精神的・社会的な弊害を除去する義務を負っており、そのために社会内の社会的援助を担う民間団体と身体を拘束されている者との十分なアクセスを維持する義務を負っていることを確認した。 このような考えはドイツで法定されつつあるが、日本では十分意識されているとは言い難い。しかし南高愛隣会などを中心にこのような試みがなされており、その理論的検討は重要な意義がある。また、このような実践の試みの全体像を把握するため、法制上の根拠や政府などとの連絡関係についての若干の調査を行った。これを踏まえて、諸外国への関連情報の照会を行った。 さらに、フランスについて、トゥールーズの拘禁センター(社会復帰に力点を置いた既決の施設)、刑罰センターにおける再犯プログラム矯正研修所、依存症アソシエーション、Mission Locale、SKIPについて聞き取り調査を行い、そこでの民間企業の関与のあり方やその機能、そこへの政府の関与のあり方について調査した。民間団体が大きな役割を果たしており、資金面などでの政府の関与のあり方を実証的に確認した。この成果も、現在日本では紹介されておらず、重要なものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究計画としては、ドイツやフランスの被疑者・被告人に対する拘禁回避のための社会的援助及び出所者に対する就労支援・住居提供支援を行うべく、政府から委託されている民間団体について、関連情報の照会を行い、民間だいたいに対し、法制度上の根拠、政府と民間団体の間の契約文書の内容、厚生・保護などの政府による援助の担当部局と民間団体との連絡関係、民間団体の運営資金の内訳、国・地方自治体・企業・財産等の財産的関与、団体の目的・背景、人的・物的構成の規模・組織形態などについて、第一回目のアンケート調査を行う予定であった。 これらの計画については、関連情報の照会は一定程度終了したところであるが、アンケート調査は十分進んでいるとは言い難い。もっとも、これには理由も存在する。上述のような、被疑者・被告人に対する拘禁回避のための社会的援助及び出所者に対する就労支援・住居提供支援が日本(南高愛隣会など)においても試験的に行われ始めたということである。このような申請後の事情に鑑み、その日本の動向を法的・理論的側面から検討する必要性が生じたため、研究計画をやや修正した次第である。この検討自体は、一定程度終了している。今後は、この検討を踏まえながら、情報の照会やアンケート調査の内容を再度検討し、その具体的実施に移行する予定である。 以上のことから、当初の研究計画そのものから見れば、やや遅れが出ていることは否定できないものの、その遅れには具体的な理由があり、さらにその理由に基づいた研究が実施され、その修正も順調に進んでいることからすれば、上記のような自己点検による評価になると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在わが国において試験的に運営されている被疑者・被告人に対する拘禁回避のための社会的援助及び出所者に対する就労支援・住居提供支援(南高愛隣会など)の具体的内容やこれに関する法的・理論的検討を踏まえて、以下の作業を行う。 (1)ドイツやフランスの被疑者・被告人に対する拘禁回避のための社会的援助及び出所者に対する就労支援・住居提供支援を行うべく、政府から委託されている民間団体について、関連情報の照会を行い、民間だいたいに対し、法制度上の根拠、政府と民間団体の間の契約文書の内容、厚生・保護などの政府による援助の担当部局と民間団体との連絡関係、民間団体の運営資金の内訳、国・地方自治体・企業・財産等の財産的関与、団体の目的・背景、人的・物的構成の規模・組織形態などについて、第一回目のアンケート調査を行う。 (2)その調査の集計や分析を行ったうえで、半構造化インタビューに必要な共通の質問票を作成する。そのうえで、ドイツ・フランスにおける各民間団体に対するインタビュー調査を、施設訪問調査も合わせる形で行う。 (3)可能であれば、ドイツ・フランス、さらには日本の民間団体の関係者、あるいはこの問題についての専門家を龍谷大学矯正・保護総合センターなどに招へいし、研究会を開催する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記(1)については、社会統計・法情報関係資料、社会内処遇や刑事司法などに関する欧文・法文書籍、欧文の雑誌の購入費用、アンケート作成などのためのコンピューター関連消耗品などを研究費を用いる。さらに、日本で試験的に実施されている制度をさらに調査する旅費等のために研究費を用いる。 上記(2)については、共通質問票を作成するためのコンピューター関係証文品に加え、インタビュー調査・施設調査のために、ドイツ・フランスへの調査研究旅費のために研究費を用いる。 上記(3)については、ドイツ・フランス、さらには日本の民間団体、さらには専門家を招へいするため、その旅費、謝金、会議費のために、研究費を用いる。
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