研究課題/領域番号 |
23530082
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
斎藤 司 龍谷大学, 法学部, 准教授 (20432784)
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研究分担者 |
赤池 一将 龍谷大学, 法学部, 教授 (30212393)
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キーワード | 拘禁短縮 / 拘禁回避 / 民間団体 / ドイツ / フランス / 聞き取り調査 |
研究概要 |
ドイツやイギリスの議論を参考として、日本における被疑者・被告人の未決拘禁の回避・短縮を目的とする社会的援助について引き続き研究を行った。無罪推定原則を前提として、あるべき拘禁回避制度の具体的あり方を検討した。さらに、長崎・南高愛隣会における取り組みについても検討した。本研究との関係では、その具体的制度の内容だけでなく、その担い手の検討が重要であるから、行政機関の関わり方や民間団体のあり方も検討した。 ドイツについては、ドイツの未決・既決の制度に関する民間団体の関与のあり方に関する動向をドイツ語文献を中心に確認した。その作業により、ドイツでは未決拘禁や行刑・更生保護への民間団体の関与、さらには上記制度の「私人化」が進んでいることが確認できた。他方で、そのような「私人化」に伴って、上記制度の「効率化」やその目的の達成の必要性が主張されていることも確認できた。民間団体の関与強化を主張する場合に留意すべき点として重要であると考える。また、ドイツにおける薬物支援を行う民間団体を聞き取り調査をすることによって、民間団体の関与を根拠付ける考え方、その財源や性格、政府等との関与のあり方、具体的な活動内容を確認することができた。それを踏まえて、さらに別の民間団体に対する照会も行った。 フランスについては、全国規模の大組織の団体を通じて、地方都市における小組織についての調査依頼がある程度可能であることの確認から、出所者支援を分野とする団体を統合している連合体組織、特に、FNARS(社会復帰支援団体に関する全国連合)に対する集中的調査を行った。当団体の活動報告のほか、関連諸団体に対するアンケート等の既存資料の収集が可能となり、今後の調査、特に、各団体に対するインタヴュー調査について、その指針を得ることができた。 以上のドイツ・フランスに関する知見は、日本でも紹介されておらず重要といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究計画としては、①ドイツやフランスの被疑者・被告人に対する拘禁回避・短縮、受刑者の支援(収容中であるかどうかを問わない)のための社会的援助及び出所者に対する就労支援・住居提供支援を行うべく、政府から委託されている民間団体について、関連情報の照会を行い、その法制度上の根拠、政府と民間団体の間の契約文書の内容、矯正・保護などを管轄する政府等の機関のうち援助を担当する部局と民間団体との連絡関係、民間団体の運営資金の内訳、国・地方自治体・企業・財産等の財産的関与、団体の目的・背景、人的・物的構成の規模・組織形態などについて、アンケート調査を行う予定であった。このアンケート調査はまだ十分なものとは言い難いが、ドイツ・フランスともに、複数の民間団体や施設に対して、事前に詳細な質問票を送付したうえで、綿密なインタビュー調査を行うことによって、その目的は一定程度達成できたと考える。 また、本年度においては、その調査の集計や分析を行ったうえで、半構造化インタビューに必要な共通の質問票を作成することも予定していた。これについては、上記のようにドイツ・フランスにおける民間団体や施設の聞き取り調査の事前準備などを通じて、研究代表者及び共同研究者で一定の内容のアンケートを作成した。 以上のことから、当初の研究計画そのものから見れば、やや遅れが出ているものの、作業を効率化することができ、その修正後の研究計画が順調に進んでいることからすれば、上記のような自己点検による評価に至った。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度行ったドイツ及びフランスにおける民間団体、施設に対する聞き取り調査の分析やその結果を踏まえて、今後は以下のように研究を推進する。 ①ドイツやフランスの被疑者・被告人に対する拘禁回避のための社会的援助、受刑者やその出所者に対する就労支援・住居提供支援を行うべく、政府から委託されている民間団体について、当該年度に調査した団体や施設以外のものについて、法制度上の根拠、政府と民間団体の間の契約文書の内容、矯正・保護など、政府による援助の担当部局と民間団体との連絡関係、民間団体の運営資金の内訳、国・地方自治体・企業・財産等の財産的関与、団体の目的・背景、人的・物的構成の規模・組織形態などについて、追加のアンケート調査や施設調査を行う。 ②長崎・南高愛隣会における被疑者・被告人、出所者に対する調査・援助制度の現状についてアンケート調査や施設調査を行うことで確認し、さらに実際上の課題や理論的な課題を具体的に把握する。 ③可能であれば、ドイツ・フランス、さらには日本の民間団体の関係者、あるいはこの問題についての専門家を龍谷大学矯正・保護総合センターなどに招へいし、研究会を開催する。 ④これまでの研究成果に加え、①②③の内容も加味して、本研究の総括を行う。可能であれば、研究会などを開催して、公開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記①については、社会統計・法情報関係資料、社会内処遇や刑事司法などに関する欧文・法文書籍、欧文の雑誌の購入費用などについて研究費を用いる。さらに、インタビュー調査・施設調査のために、ドイツ・フランスへの調査研究旅費のために研究費を用いる。さらに、日本で試験的に実施されている制度をさらに調査する旅費等のために研究費を用いる。 上記②については、アンケート作成のための費用、長崎までの旅費などのために研究費を用いる。 上記③④については、ドイツ・フランス、さらには日本の民間団体、さらには専門家を招へいするため、その旅費、謝金、会議費のために、研究費を用いる。
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