研究課題
最終年度においては、過去2年間の調査を踏まえた、総合的な調査や補充調査が中心となった。ドイツについては、文献調査や聞き取り調査の結果、未決・既決、両者の拘禁制度への民間団体の関与のあり方に加え、民間団体が生まれた契機、その運用のありかた、財源、公共団体との関係の維持方法、刑事司法以外の領域との関係などについて調査を行った。ドイツでは、「下から発生した民間団体」が非常に多く、未決や既決の被収容者が結果的に複数関与することになったという事例が多く聞かれたからである。他方で、昨年度の成果も踏まえ、近年、国や州の財政状態の悪化などから、拘禁制度の効率化を一つの目的とする「私人化」が主張され、これとの関係で民間団体の関与が主張されていることを追加調査で確認した。このように、民間団体の関与については、さまざまなものがありうる。もっとも、後者については、効率化を主目的とする点で、元被収容者に対する援助の側面が後退するなどの問題点や批判を確認することができた。これに加え、ドイツにおける未決拘禁の短縮や回避を目的とする援助への民間団体の関与について検討を加えたものを公表するなどの作業も行った。フランスについては、本年度は、いわゆる官民協働刑務所の建設計画における官民協働による行刑運営形態と、前年度調査を行った出獄者等に対する住宅・就労支援を行うNPO団体のFNARS等の民間組織と司法省矯正局との相互強力形態とについて比較検討を行った。特に、前者の官民協働型刑務所の拡充・増加とともに、後者のNPO団体と矯正局との協力関係が強化されてきた構造的な背景について一定の分析を行い、いわゆる刑務所完結主義が依然として支配している日本の矯正現場との政策の差がどこに起因するのかについて一定の検討を行った。以上の結果は、いずれもドイツ及びフランスに関する最先端の研究であって、大きな成果であると考える。
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浅田和茂=葛野尋之=後藤昭=高田昭正=中川孝博『福井厚先生古稀祝賀論文集 改革期の刑事法理論』
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龍谷大学矯正・保護総合センター研究年報
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http://www.geocities.jp/tsukasaviola/kenkyu.html