本研究は、(1)中国民事訴訟の手続構造について、予定されている全面改正の動向を踏まえながら、法と運用実態の両面から分析を行い、(2)日中両国の審理方法と訴訟運営のあり方を比較研究することにより、普遍的なものと固有なものを明らかにし、両国それぞれにとってのあるべき審理方法と訴訟運営を検討することを目的とし、社会変動が激しく、様々な格差を内包する現代中国における裁判所の後見的介入、地域と事件類型による適切な訴訟運営の必要性に鑑み、現在の実務と今後の方向性につき、我が国との比較において考察したいと考えた。 本年度は、(1)については、2012年の中華人民共和国民事訴訟法の改正を受け、昨年度に引き続き、中国北京で情報・文献収集に努めるとともに、(2)についても、改正後の中国民事訴訟の動向を踏まえ、これまでの調査・研究結果を基に、九州大学の研究者を中心として行われてきた「日中民事訴訟法比較研究」をテーマとする研究会に参加し、検討を重ねた。研究会には、研究者のみならず、中国で活躍されている弁護士、また、北京に赴任されている中国民事訴訟法・民事関連法改善プロジェクトの長期派遣専門家も参加され、本研究が目的とした手続構造、審理方法・訴訟運営共に、日本との比較における多様な角度からの深い検討を行うにあたり、大いに意義を有した。また、当研究会は、「日中民事訴訟法比較研究」として、民事訴訟法全般にわたる日中両国の執筆者による共著を出版予定であり、本研究の成果として、「中国民事審理方式変革の比較法的考察」をテーマとして論文とした。
|