本研究は、世界で最も早くインサイダー取引規制を導入した国の一つである、カナダのインサイダー取引規制の概要をわが国で初めて明らかにした点で意義を有する。規制の目的を公共の利益や市場の公平性に置く点はわが国と等しいが、内部者取引を合法的なインサイダー取引として、一定の範囲と手続きの下で認めている点はわが国の実情と異なる。他方で、違法なインサイダー取引の規制枠組みはわが国と類似する。但し、要件の定め方はやや抽象的であり、アメリカのそれに近い。また、違法なインサイダー取引の抑止効果を狙い、証券法以外にも関連規定を置く。現行のわが国の規制を見直す際に、本研究は有益な示唆を与えるものと思われる。
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