本年度は、子の監護をめぐる問題((a)両親間での子の奪い合い、(b)親権者・監護権者の決定(面接交流に関する決定を含む)、および、(c)子の扶養義務)の全般につき、前年度までに引き続き内外の文献調査を行ったのに加えて、両親間での国際的な子の奪い合いに対応するための条約であるハーグ子奪取条約(1980年)に日本が正式に加盟した(2014年4月から発効)ことに伴い、この条約につき実務的な観点も含めて検討を行った。具体的には、平成25年6月にこの条約の実施法案を審議する参議院法務委員会に弁護士等とともに参考人として出席して意見を述べて議員との間で質疑応答を行い、同年9月にはこの条約に詳しい弁護士と対談をして実務的問題点の概観を行い(ジュリスト1460号掲載)、同年11月には、この条約の運用を担当する東京家庭裁判所において条約に関する講演をするとともに担当裁判官等との協議を行い、また同月にローエイシア日本協会(家族法部会)主催のシンポジウムにおいてこの条約運用における私的調停の役割等について報告し、裁判官・弁護士等との討議を行った。また、同年10月のローエイシア大会(シンガポール)ではアジアの家族法関係の研究者・実務家とこの条約の運用等をめぐって意見交換をした。これらの報告等の準備と実務家等との対話を通じて、この条約についての研究を深めることができた。 初年度・第2年度における検討も含めて、これらの研究の成果は、いくつかの形ですでに公表しているが、今後も引き続き外国語(英語およびフランス語)によるものも含めて公表を予定している。
|