研究課題/領域番号 |
23530090
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大村 敦志 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30152250)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 法教育 / 公民教育 / 穂積重遠 |
研究概要 |
本年度は、「法教育」の前史を明らかにするための歴史研究に時間を注いだ。具体的には、「法教育の父」というべき穗積重遠に関する総合的な研究を進めた。 穗積は著名な民法学者であるが、文部省が関与して設立された社会教育協会の会長を長年にわたって務めるとともに、中等学校における公民教育必修化にも関与し、多くの公民教科書の編者となった人物でもある。そこで、彼が編集した教科書類のほか、穗積の講演録や普及用パンフレットを収集し検討し、大学以外の場での教育の試みについても検討を加えた。さらに、重遠の講演旅行の足跡を追って、国内各地のほかに韓国・中国にも資料を求めた。 この過程で、重遠の公民教育=法教育観は、その法学像・人間像と密接に関連していることがわかった。そこで、公民教育=法教育に限らず、トータルに彼の業績を評価するなかで、法教育の位置づけをはかるように努めた。また、彼の足跡を追った海外調査に際しては、当該調査国の法教育の状況を知ることができたが、それもまたその国の法学像と密接に関連するとの認識に至った。 以上の研究の副次的な成果として、重遠の法教育関連著作を「われらの法―穂積重遠法教育著作集」全3巻にまとめて刊行するに至った。また、彼の講演旅行の足跡や教育観などを示す日記も「戦中戦後日記(1945-1950年)」(仮)として近刊予定である。さらに、彼の業績の全体像を示すための評伝の執筆にも着手し、暫定稿を脱稿するに至った。これはいずれ「穂積重遠―社会教育・社会事業を両翼として」(仮)として刊行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
穂積重遠研究としては、現在の資料状況で可能な範囲の検討はほぼ実現し得た。学界に対して、著作集・日記という基礎資料を提供し得たほか、私自身の評価を含む評伝も完成に近づいている。これらによって、法教育の前史は、法学史・法学教育史と統合された形で提示されることになるほか、穂積重遠やその周辺の人物に関する研究を促すことになるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、戦後の教育改革との関係で、田中耕太郎や南原繁の業績をフォローする。特に、教育基本法の制定に関与した田中に関しては、穂積重遠の場合と同様に、総合的な研究を試みたい。また、重遠に関する海外調査において、単に当該国の法教育の現状のみならず、法学史・法学教育史との関連を追うことが重要であることが認識されたので、重遠や田中耕太郎が浅からぬ関係を持ったフランスにつき、追加調査を試みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、上記の追加調査(現地での資料収集を伴う)および、今年度の調査結果のとりまとめのための事務作業などに充てるほか、戦後期の資料や関係人物に関する資料の収集に充てる。
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