最終年度は、法教育の歴史と理論に関する研究を進めるとともに、前年度に行った現状分析(および比較研究)との総合を試みた。具体的には、第一に、戦前の教育勅語と戦後の教育基本法の公民観を対比検討するとともに、戦前の公民教育、戦後の公民教育の概要をフォローした。第二に、道徳教育・幼児教育・社会科学教育・公民教育そして法学教育と対比しつつ、法教育の位置づけと特殊性の指摘を行った。結論としては、これらと重なりつつ法教育が存在することを確認した上で、基層の法教育と上層の法教育との二元論において法教育を把握すべきであるという認識に達した。 また、法教育の実践面でもいくつの知見を得た。第一に、法科大学院生の協力を得て、基本制度のうち、不法行為・契約・家族・団体を素材に、その制度的細目ではなく存在意義を問う授業を展開してもらった。授業内容にはなお不十分なところが残ったが、法教育の教育を行う側にどのような教育を施すことが必要かという「法教育」教育の観点からは貴重な知見が得られた。第二に、少数を高校生を相手に私自身が授業をすることによって、高校生にかなり高いレベルの教育を行うことが可能であることが確認できた。第三に、小学生を相手に授業をする機会を得たが、これを通じて、制定法から離れた法教育の必要性を具体的に理解するに至った。 以上のような理論上・実践上の認識を得たことをふまえて、次の段階としては法学導入教育としての法学入門と法教育との架橋をはかることが課題であることを確認した。
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