研究課題/領域番号 |
23530092
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
宮下 修一 静岡大学, 法務研究科, 准教授 (80377712)
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研究分担者 |
朱 曄 静岡大学, 法務研究科, 准教授 (30435945)
西澤 希久男 関西大学, 政経学部, 准教授 (50390290)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 民事法学 / 民法 / 消費者法 / 契約解消 / クーリング・オフ / 契約取消し / 契約取消権 |
研究概要 |
本年度は、研究対象である契約解消法制について、日本における立法の運用上の問題点と議論状況をとりまとめるとともに、比較研究対象国のうち中国と韓国をそれぞれ訪問し、研究協力者を含む研究者や法曹実務家に対してヒアリング調査と情報・資料収集を行った。 まず、日本については、研究代表者である宮下が、消費者契約法上の契約取消権や特定商取引法上のクーリング・オフの規定等をめぐる立法動向や議論状況をとりまとめて、論文を公表するという形で、現行制度の問題点と議論状況を明らかにした。 また、中国については宮下と研究分担者の朱が、まず首都であり政治の中心地である北京に、次いで、商業の中心地である上海および急成長を遂げている地方都市である杭州を訪問し、消費者法に精通した研究者や実務家との意見交換を行った。その結果、各都市、さらに中国全体における消費者被害の状況、さらに消費者権益保護法をはじめとする消費者関連法規の運用状況を把握することができた。とりわけ、消費者取引に関する法整備の動きが比較的鈍い中国においても、一部の分野ではクーリング・オフを導入しようという動きがあることが判明した点は、きわめて重要である。 韓国については、宮下と連携研究者の岡が首都で政治・商業の中心地であるソウルを訪問し、消費者法に精通した研究者との意見交換を行った。その結果、韓国における消費者被害の現状を把握するとともに、クーリング・オフをめぐる議論状況について、近似のまとまった研究業績を入手し、その内容に関する情報を入手することができた。 以上のように、本年度の研究で得られた成果は、とりわけ日本にあまり詳しく紹介されていない中国・韓国のクーリング・オフ制度を中心とした契約解消法制の新たな動向を把握できた点で大きな意義があり、かつ重要性も高いものと思料する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、(1)わが国ではほとんど研究の進んでいない比較対象国の立法・実務状況を整理・分析するとともに、(2)あるべき立法のあり方をその理念にとどまらず、具体的な立法提案として提示することである。 本年度は、このうち(1)について、その作業の前提となる(1)日本における問題点と議論状況の把握、さらに比較対象国である(2)中国における問題点と議論状況の調査・把握、(3)韓国における問題点と議論状況の調査・把握を行うことをそれぞれ計画していた。すでに「研究実績の概要」で述べたように、(1)・(2)・(3)のいずれも重要な研究成果が得られており、現段階では研究目的の達成に向けて研究は「おおむね順調に進んでいる」と評価できると思料する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、比較研究対象国のうち、台湾・タイを訪問し、消費者法に精通した研究者・実務家に対するヒアリングを通して、契約解消法制をめぐる立法動向と議論状況の調査・把握を行う。また、中国・韓国についても引き続き調査を継続するとともに、両国の研究者を招聘してセミナー等を開催することも計画している。 そのうえで、最終年度に、本研究で得られた成果をとりまとめたうえで、各国の研究者を招聘してアジア消費者法国際セミナー」を開催すべく、準備を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、上記の「今後の研究の推進方策」に記したように、比較研究対象国を訪問するための旅費、さらに、それらの国の研究者を招聘するための旅費・謝金等が必要となる。また、引き続き各国およびそれらの国に影響を与えている国における本研究課題に関わる図書・資料収集のための物品費が必要となる。
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