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2012 年度 実施状況報告書

アジアにおける消費者契約解消法制の比較法的研究―日・中・韓・台湾・タイを中心に

研究課題

研究課題/領域番号 23530092
研究機関静岡大学

研究代表者

宮下 修一  静岡大学, 法務研究科, 教授 (80377712)

研究分担者 朱 曄  静岡大学, 法務研究科, 准教授 (30435945)
西澤 希久男  関西大学, 政経学部, 准教授 (50390290)
キーワード民事法学 / 民法 / 消費者法 / 契約解消 / クーリング・オフ / 契約取消し / 契約取消権
研究概要

本年度は、1.中国から消費者撤回権の研究者を招聘して講演会および研究会を開催するとともに、2.比較研究対象国である4つの国・地域のうち、前年度は訪問できなかった台湾とタイを訪問し、研究協力者を含む研究者や消費者法関係の実務に携わる者に対するヒアリング調査を行った。また、3.日本における消費者契約解消法制の動向についても、引き続き検討を行っている。
1については、2012年9月に、中国人民大学の姚海放副教授を静岡大学に招聘し、「中国における消費者撤回権と実際の動向」と題する講演をしていただくとともに、研究会において意見交換を行った。その結果、中国では、とりわけインターネット取引や金融取引の分野で、消費者撤回権の立法へ向けた動きが加速度的に進んでいる状況が明らかとなった。姚副教授の報告原稿とそれを受けた宮下の解題を兼ねた論文は、静岡法務雑誌5号に掲載されている。
2については、2012年9月に宮下と朱が台湾を訪れ、台湾大学および台湾消費者保護処においてヒアリング調査を行い、消費者保護法に規定されている撤回権の大幅な改正へ向けた議論状況を確認した。また、2013年2月には、宮下と西澤がタイを訪れ、チュラロンコーン大学および消費者のための財団においてヒアリング調査を行い、直接販売法に規定されている解除権が実効性をもつ形で利用されていない現状を確認した。これらの成果については、次年度以降の発表を予定している。
3については、とりわけ、現行法上はあくまで行為規制ルールにとどまっている適合性原則違反について、消費者の救済にとってより実効性をもたせるために、契約取消権の導入へ向けた立法提案などを行った。具体的な研究成果については、国民生活研究などで公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究の目的は、1.わが国ではほとんど研究の進んでいない比較対象国の立法・実務状況を整理・分析するとともに、2.あるべき立法のあり方をその理念にとどまらず、具体的な立法提案として提示することである。
本年度は、まず、このうち1について、中国から研究者を招聘して前年度のヒアリング調査では十分に得られなかった情報を得ることができ、かつ、その成果を論文の形で発表することができた。また、比較対象となる4つの国・地域のうち、前年度に調査できなかった台湾・タイでの調査を実施し、研究テーマにかかる立法動向とそれに関する議論状況について、これまでわが国では明らかとされていなかった情報を含めて把握することができた。
また、2については、とりわけこれまでは契約取消権について規定されてこなかった適合性原則に関して、わが国における議論と諸外国における議論を参照しつつ、具体的な立法提案を行うことができた。
いずれも、単に調査を実施し、また、講演会・研究会を開催するにとどまらず、論文を発表し、具体的な形で成果を社会に還元することができたことを考慮すれば、研究は、「当初の計画以上に進展している」と評価できると思料する。

今後の研究の推進方策

次年度は、1.消費者撤回権に関する立法が整備されている台湾・韓国の状況をさらに深く把握するとともに、2.本研究の最終年度にあたるため、その成果のとりまとめに向けた作業を行う。
1については、当初は、比較対象となるすべての各国・地域から研究者を招聘しセミナーを開催することを計画していたが、採択された予算に限りがあるため、特に議論状況が進んでいる台湾・韓国・中国のいずれかの研究者を招聘して国際セミナー等を開催する(招聘が難しい場合には、再度現地に渡航して調査を行う)ことを予定している。
2については、各国の調査および比較研究によって得られた成果、さらに1の国際セミナー等の成果をふまえて、逐次、論文の形で公表する予定である。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 民法から――説明義務違反・適合性原則 (民・商法の溝を埋めるPart.2)2013

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 696号 ページ: 18-21頁

  • [雑誌論文] 適合性原則違反の判断基準とその精緻化2013

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 雑誌名

      松浦好治=松川正毅=千葉恵美子編『市民法の新たな挑戦(加賀山茂先生還暦記念)』

      巻: 記念論文集 ページ: 115-147頁

  • [雑誌論文] アジアにおける消費者撤回権の比較法的研究の意義――姚海放副教授の論文の解題を兼ねて2013

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 雑誌名

      静岡法務雑誌

      巻: 5号 ページ: 37-45頁

  • [雑誌論文] 中国における消費者撤回権と実際の動向2013

    • 著者名/発表者名
      姚海放(朱曄・訳)
    • 雑誌名

      静岡法務雑誌

      巻: 5号 ページ: 47-62頁

  • [雑誌論文] 適合性原則と民事責任(1)2012

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 雑誌名

      国民生活研究

      巻: 52巻1号 ページ: 1-19頁

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 適合性原則の理論的考察――民事責任のあり方を中心に2012

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 雑誌名

      消費者法ニュース

      巻: 92号 ページ: 373-376頁

  • [雑誌論文] 適合性原則と民事責任(2・完)2012

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 雑誌名

      国民生活研究

      巻: 52巻2号 ページ: 34-55頁

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 中小事業者と消費者法をめぐる裁判例の動向2012

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 雑誌名

      現代消費者法

      巻: 17号 ページ: 4-14頁

  • [雑誌論文] 消費者契約法における「消費者」性の判断基準2012

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 雑誌名

      民事研修

      巻: 668号 ページ: 2-11頁

  • [学会発表] 静岡県司法書士会平成24年度第1回裁判事務研修会

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 学会等名
      判例からみた消費者契約法
    • 発表場所
      静岡県司法書士会館(静岡県)
    • 招待講演
  • [学会発表] 第68回先物取引被害全国研究会

    • 著者名/発表者名
      宮下修一
    • 学会等名
      適合性原則と説明義務の判断基準の精緻化
    • 発表場所
      ツインメッセ静岡(静岡県)
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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