研究課題/領域番号 |
23530094
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中舎 寛樹 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10144106)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 意思表示 / 意思的関与 / 認容 / 合同行為 |
研究概要 |
本研究は、民法上、法律行為が存在していないにもかかわらず、それが成立していると同様の法律効果が発生するとされている場面を素材として、その際の責任根拠とされている「意思的関与」が法律行為論ないし意思表示論との関係でどのように位置づけられるべきかを理論的に明らかにすることを目的としており、本年度は、研究の初年度として、表見法理における責任根拠である真の権利者の「帰責性」及び、複合契約関係における責任根拠である取引当事者の「システム参加」が法律行為論ないし意思表示論の観点からどのような内容を有するものであるかを実証的に明らかにすることを目指した。まず、表見法理に関しては、これまでの自己の研究を再整理・再検討することによって、帰責性の内容は、無権利者の行為に対する真の権利者の「認容」として統一的に理解でき、これによって第三者に対する責任を基礎づけることができることを明らかにした。また、複合契約関係に関しては、従来の研究による法律構成の限界を指摘するとともに、今後は、多数の当事者によって一つの多角的法律関係が形成されているという視点に立つことの必要性を説き、取引に参加する当事者の「合同行為的な意思」によって、個別的な契約関係とは別に取引共同体的な法律関係が形成されており、これらの重層的な関係によって、契約関係にない者の間においても一定の法律効果が発生することを基礎づけることができることを明らかにした。同時に、これらの「認容」及び「合同行為的な意思」は、従来の法律行為論ないし意思表示論においては明確に位置づけることが困難であることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、表見法理における帰責性の具体的内容と、複合契約関係におけるシステム参加の具体的内容を判例・学説に照らして実証的に明らかにすることを目指したが、前者についてはそれが「認容」であり、後者においてはそれが「合同行為的な意思」であることを明らかにできたので、研究計画はほぼ予定通り実現できた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度の研究で得られたキーワードである「認容」及び「合同行為的意思」が従来の法律行為論ないし意思表示論においては明確に位置づけることに限界があることを明らかにするとともに、わが国及びドイツ法の法律行為論、フランス法及び英米法の契約基礎理論における新たな研究動向を参考に、法律行為論ないし意思表示論の中に意思的関与ないしそれに類似する態様を取り込むことができる理論的可能性を検討する。最終年度は、前年度までの実証研究、比較法研究、理論研究を総合して、意思的関与の基礎理論上の意義・内容及び実用法学上の運用基準を提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
わが国、ドイツ法、フランス法、英米法における法律行為論・意思表示論、契約基礎理論に関してできるだけ最新の重要文献を購入するために使用する。次年度への繰越額はこの一部に充てる。購入することができない重要資料につき、他大学の所蔵する資料を探索・収集するとともに、法律行為論ないし意思表示論に関するわが国の研究者から本研究の発想、成果に対する意見を収集し、研究の進展に有効な知見を得るための旅費に使用する。短期間、収集した資料を整理するためのアルバイトの謝金に使用する。資料複写、プリンターのトナーなどの消耗品を購入するために使用する。
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