研究課題/領域番号 |
23530095
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 敬三 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80191401)
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キーワード | 差別 / 平等 / 基本権 / 人格権 / 私法 / 国際情報交換(ドイツ) |
研究概要 |
平成24年度は、次の3つの作業を平行して行った。 第1に、平成23年度に引き続き、ドイツにおける一般平等取扱法の制定過程及び制定後の議論状況に関する調査・検討を行った。当初の計画では、専門家との意見交換及び資料の収集・調査を行うべく、ドイツ(マックス・プランク外国法・国際私法研究所)を訪問するための費用を計上していたが、平成24年5月に、研究代表者が台湾にて開催された国際比較法学会に出席した際に、上記研究所のスタッフと意見交換を行い、資料に関する情報を得ることができたため、本科学研究費より費用を支出する必要がなくなった(そのため、平成24年度にこの費用にあてることを予定していた研究費を国内法に関する資料の収集にあてることとした)。 第2に、以上のドイツ法及び日本法の調査・検討を踏まえて、日本における平等権と人格権に関する議論状況を調査・検討することにより、私法関係における差別禁止法理の理論枠組みの検討を進めた。その研究成果の一部を、国際人権法学会にておこなわれたシンポジウム「差別表現・憎悪表現の禁止に関する国際人権法の要請と各国の対応」にてコメンテーターとして招待された際に、発表した。 第3に、内閣府の障害者政策委員会禁止部会において行われた「障害を理由とする差別の禁止に関する法律」の制定に向けた審議に委員として参画し、立法の必要性と課題に関する検討を行い、立法の必要性について積極的に提言を行った(研究代表者の発言を含む同部会の議事録はhttp://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/において公表されている)。その成果の一部を、京都大学人権に関する研修会において、「障害を理由とする差別の禁止に関する立法の課題-障害者政策委員会差別禁止部会意見書の概要」という題目で講演することにより、発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画で予定していた上記3つの作業は、おおむね予定どおり行うことができた。 第一に、ドイツにおける一般平等取扱法に関する調査は、上記のとおり、当初予定していたとおり滞りなく行うことができた。 第二に、平等権と人格権に関する検討を進めることにより、私法関係における差別禁止法理の理論枠組みの骨格を明らかにすることができた。さらに、そのような理論枠組みにより、具体的な問題として、「差別表現・憎悪表現」をめぐる問題を整理・分析することを試み、上記国際人権法学会のシンポジウムにて発表することにより、他の専門家の反応を確認することもできた。 第三に、差別禁止部会においては、障害者政策委員会差別禁止部会意見書の作成に積極的に関与することにより、研究計画で予定していた締約強制に関する問題を含め、私法関係における差別禁止の救済法理について検討を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、次の作業を行う。 第一に、ドイツの一般平等取扱法に関する調査・検討を継続する。平成24年度において必要な資料の収集・調査を行ったものの、質量ともに膨大であり、なお精査を要するところであり、下記の検討を進めるために必要なものを取捨選択しながら、調査・検討を進めることを予定している。 第二に、平成25年度中に立法化が予定されている「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」案を素材として、私法関係における差別禁止法理の理論枠組みの構築と救済法理のあり方について検討を進める。その際には、立法化に向けた情報を内閣府の関係者とも連携しながら収集に努めるほか、上記差別禁止部会に関与した実務家を含む専門家とも意見交換を行うことを予定している。 第三に、以上の検討の成果をまとめて、論文等の形で公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、次のように研究費を使用する予定である。 第一に、ドイツ一般平等取扱法及びそれと関連する日本法の議論に関する情報の収集・整理について研究費を使用する。 第二に、日本における平等権及び人格権に関する資料、並びにその基礎にある思想及び社会的実態に関わる情報の収集・整理について研究費を使用する。 第三に、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」に関する情報の収集・整理について研究費を使用する。
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